「ああ、見つけてしまったんだね、財前葵」
「あなたは」
近くの特大掲示板が突如切り替わり、SOLテクノロジー社の庭園が表示される。
「知らなくていいこともあるというのに」
「どういうこと」
「事故を起こした男を恨んでいればよかったのに、そうもいってられなくなってしまったこの状況に愕然としているのは誰だい?」
「っ」
「え、ちょ、アインスさん。財前さんに何をしたんですか!」
「僕は何もしてないさ、勝手に僕らのことをかぎ回っていただけ。勝手に知って勝手に絶望してるのさ」
「そこは……まさか」
「ああ」
和波は血の気が引いたのか真っ青になる。
「……ごめんなさい、和波君」
和波はアインスをにらみつけた。
「ここに来るにはあそこを通らないとだめだったはずでしょう?誘導したのはあなたじゃないですか、アインスさん」
「まあ、そうとも言うね」
アインスはケラケラ笑う。
「何を怒ってるんだ、エルフ。いつかくる日がたまたま今日だっただけだろう?」
「ちがいます、僕はただ、財前さんたちとは普通の友達でいたかった」
「無茶を言うな、財前葵はグレイ・コードだけじゃない、ハノイの騎士にもかかわりがあるんだからね」
「なっ!?」
「な、なによそれ、なによそれぇ……何を知ってるの、あなた」
「知りたかったらここまで来るといい」
アインスは笑う。葵はアインスをにらみつけた。
「まさか逃げるつもり?」
「まさか!ただ、スペクターに負けたキミが僕に勝てるとは思わないのも事実だね。だからまずは真実を目にするに値するかどうかみせてくれないか」
「なによそれ、さっきから勝手なこと言っちゃって」
「いくらでも口でならいえる。デュエリストならデュエルで勝利することでその権利を得るべきだろ。違うかい?」
こしゃくな笑みを浮かべたアインスはゆびさす。つられて後ろを振り返った葵は、そこにいつだったかplaymakerと手分けしてデュエルした人工デュエリストがいると気づいた。
「まずはこいつに勝ってくれ。話はそれからだ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、少しは話を!」
通信は途絶えてしまう。あーもう、と葵は叫ぶ。そして人工AIを前にデュエルディスクを構えたのだった。
「先攻はいただくわ!私のターン!フィールド魔法《トリックスター・ライトステージ》を発動!このカードの発動時の効果処理として、デッキから《トリックスター》モンスター1体を手札に加える事ができる。《トリックスター・キャンディナ》をサーチするわ。そしてそのま《トリックスター・キャンディナ》を攻撃表示で通常召喚!」
葵の前に可愛らしいアイドルが出現した。
「モンスター効果を発動よ。このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから《トリックスター》カード1枚を手札に加えるわ。そして、チェーンして手札から《トリックスター・マンジュシカ》のモンスター効果を発動!手札のこのカードを相手に見せ、《トリックスター・マンジュシカ》以外の自分フィールドの《トリックスター》モンスター1体を対象として発動できる。このカードを特殊召喚し、対象のモンスターを持ち主の手札に戻すわ。さらにチェーンして速攻魔法《サモンチェーン》を発動!同一チェーン上で複数回同名カードの効果が発動していない場合、そのチェーン3以降に発動できる。このターン自分は通常召喚を3回まで行う事ができるわ。つまり今回は通常召喚が3回できるってことよ」
先攻、そして相手による妨害がないためチェーンにより処理が行われていく。
《トリックスター・マンジュシカ》の効果が適用されて《トリックスター・キャンディナ》を手札に戻し、《トリックスター・マンジュシカ》が特殊召喚される。《トリックスター・キャンディナ》の効果が適用され罠カード《トリックスター・リンカーネイション》がサーチされる。さらに《トリックスター・キャンディナ》が通常召喚され、モンスター効果により罠カード《トリックスター・リンカーネイション》がサーチされる。そして《トリックスター・マンジュシカ》の効果が適用され《トリックスター・キャンディナ》を手札に戻し、特殊召喚する。最後に《トリックスター・キャンディナ》が通常召喚され、モンスター効果で《トリックスター・リンカーネイション》がサーチされた。
「私は《トリックスター・リンカーネイション》を3枚伏せてターンエンドよ」
葵は初めから相手にターンを渡す気は無かった。
相手の人工AIが後攻ドローした瞬間、《トリックスター・マンジュシカ》《トリックスター・ライトステージ》800のダメージが発生する。次に、スタンバイフェイズに《トリックスター・リンカーネイション》を3枚発動すれば、《トリックスター・リンカーネイション》1枚で2800ダメージが入るのだ。これが3枚となれば8400の大ダメージである。通常のドローのダメージと合わせて9200ダメージが入ることになる。
「さあ、きなさい、AIさん。あなたにターンは渡さないんだから」