●コードオブザデュエリスト@
ばあん、と乱暴に開かれた扉が反動でひっくり返るが島は構わず和波のところに直行した。生徒たちはあまりに大きな音に迷惑そうな視線をなげかけるが本人はお構い無しである。そのうち興味を失った彼らのざわめきが再開する。あわただしいあし音が近づいてきて、朝の一限目から寝る気満々だった遊作は眉を寄せたまま顔を上げた。


「よーっす!おはよう、和波!」

「おはようございます、島君!どうしたんですか?」

「どうもこうもあるかよ、これだよこれ!」


学生鞄を机に乱暴に置き、島は和波にデュエルディスクを突きつける。そこには運営からのお知らせメールがあった。


「あ、それ!やっぱりそれですか!」

「その反応は和波もチェック済みだな!」

「もちろんですよ島君!」

「あはは!和波ならいってくれると思ってたぜ、さすがだな!」

「えへへ、ありがとうございます!もちろん、島君も参加しますよね?」

「あたりまえだろ!」


目の前でこれ見よがしに騒がれては寝るに寝られない遊作は不機嫌になっていく。我慢できなくなった遊作はため息混じりに二人を睨む。


「うるさい、ふたりとも」

「あ、藤木いたのか」

「最初からいた。寝れないだろ、他のとこで騒げよ」

「なんだよなんだよ、いきなり寝るのか」

「眠いんだよ」

「お前そればっかだな。ちょうどいいや、藤木もこれを機に参加しろよ。今ならリンクモンスターがついてくるぜ」

「は?」


低音の返事にもめげずに島はデュエルディスクを見せつける。


「リンクヴレインズの新しいキャンペーン?」

「そう!そうなんだよ、来週からなんだぜ!くーっ!はやく授業終わらねえかな、待ちきれねえぜ!」

「既存テーマにリンク召喚が導入されるんです!楽しみだなあ!」

「なんか、キャンペーンスタッフに勝てたらリンクモンスターの新規がもらえるんだろ?しかも今日から既存テーマが新しくラインナップに登場とか大盤振る舞いだな!」

「アナザーとかハノイの塔のせいでユーザーが減ってるからか」

「アップデートやメンテナンスの関係で長い間休みでしたもんね」

「たしかにあれは怖かったもんなー、気持ちはわかるぜ。俺の場合は未遂だけどな」

「……とんだデビューになっちゃいましたもんね。ほんとに無事でよかったです」

「いやー、和波も藤木も助けに来てくれてありがとな!でも俺は大丈夫だから、安心してくれ!やるべきことは自分で決めて切り開いていけってplaymakerにアドバイスもらったんだ!そんなことで二の足を踏むような男じゃないぜ!」


にひ、と笑う島に和波はよかったと嬉しそうだ。


「あれのせいでせっかく島君と遊べると思ったのに、デュエルまでやめちゃったらどうしようって心配だったんですよ、僕」

「和波……そこまで心配してくれたのか、いいやつだなあ!」

「あたりまえじゃないですか、島君は最初のデュエル仲間なんですから」

「結局リンクヴレインズにまた行くのか。懲りないな、二人とも」

「いいじゃないですか、藤木君。デビューで島君はハノイの騎士に勝ったんですよ!なかなかできることじゃないですよ」

「いやー、慣れると案外楽しいなスピードデュエルって」

「マスタールールとは違ったよさがらありますよね!」

「だな!今回のキャンペーンはどうやらスピードデュエルでそのリンクモンスターを使うスタッフに勝てばいいみたいだし、腕がなるぜ!」

「いっぱい練習しましょうね、島君!」

「そうだな!デュエル部はまだまだ休部状態だし、今のうちにたくさんデュエルして部長や先輩をびっくりさせてやるぜ!なあ、藤木もこいよ」

「俺はいい、興味ない」

「えー、まじかよ。よかったら案内するぜ?」

「だからいいって」

「どうしても嫌ですか、藤木くん」

「ああ」

「そっかあ、残念だなあ。島君、藤木くんほんとに眠いみたいですし、そろそろ静かにしてあげましょう。先生もくる時間ですし」

「まじかよ、ほんと和波は甘いなあ。ま、そこがいいとこだけどな」


予鈴が朝休みの終了を告げている。島は椅子にどかりと座るとどのページか教えてくれと和波に電子書籍の教科書について聴き始める。遊作はようやく眠る体勢に入れたのだった。


キャンペーンの名前はCODE OF THE DUELIST(コード・オブ・ザ・デュエリスト)。キャッチコピーは《勝利への暗号(コード)へアクセスせよ!新たな風をつかめ、決闘者(デュエリスト)!!》、《時を越えてリンクせよ!歴戦のデッキは新たな境地ステージへ!!》。CMの解禁日が今日だったようで、どのチャンネルをつけてもCMが流れている状態だった。暗号はdecode、スタッフに勝利することで獲得できるパスワードん入手しようという意味もあるようだ。 


このイベントで入手できるリンクモンスターはすべてリンク3、リンクマーカーは上・左下・右下の三箇所。
これまでに登場したテーマデッキ20種類を強化する新規リンクモンスターを入手することができるらしい。


強化される20種のテーマデッキは【デーモン】・【剣闘獣】・【ライトロード】・【ジェムナイト】・【ヴェルズ】・【甲虫装機】・【聖刻】・【魔導書】・【マドルチェ】・【水精鱗】・【聖騎士】・【シャドール】・【クリフォート】・【霊獣】・【セフィラ】・【アロマ】・【彼岸】・【メタルフォーゼ】・【クリストロン】・【召喚獣】となっている。


これから順次、リンクモンスターのカードが公開されていくようだ。今のところ、スタッフに勝てばリンクモンスターを受け取れるパスワードが入手でき、今週からその強化されるテーマが実装されるらしい。そしてリンクヴレインズ内で使用できるポイントの半分でサンプルのデッキデータがもらえるようだ。どうやらスタッフはそのサンプルデッキを使用するようで、攻略サイトにはすでに推奨カードやテーマが飛び交っている。


今までリンクヴレインズでは、リンク召喚を押す意味でもなかなか他テーマの実装は実現していない経緯がある。なかなか大規模なイベントだ。そのためかアップデートの予定時間がいつもより長めに設定されている。


「僕、どのスタッフとデュエルしようかなー」

「うーん、《バブーン》と相性いいリンクモンスターどれだあ?」

「モンスターの詳細はこれからですし、待ちましょう」

「うう、待ちきれねえぜ!」


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bkm






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