コードオブザデュエリスト10-3
「お待たせしました、ブレイブマックス」

「お疲れ、ワナビー。しっかし多いなあ、ハノイの騎士」

「アナザー事件のあとは人工デュエリストとの抗争が続いてますからね。playmaker狩りも継続中なんだと思いますよ」

「だよなあ……よーし気を取り直してイベント会場に行こうぜ」

「そうですね、会場にさえいければなんとか」

「会場は大丈夫なんですか?」


心配そうに見上げてくるウィンに、ブレイブマックスは大げさなくらいに笑った。


「SOLテクノロジー社がな、人工デュエリストを配置するだけじゃなくて最新鋭のプログラムを展開してるって話だ。だから大丈夫だと思うぜ」

「そうなんですか!すごい!ブレイブマックスさんてなんでも知ってるんですね!教えてくださりありがとうございます!それなら安心ですね」

「だな!」


ワナビーは笑いながら2人に先を促した。



リンクヴレインズはイベント会場が安全地帯となっているため、ユーザーも自然と集まるのだ。それ以外はハノイの騎士がplaymaker狩りと称したユーザー狩りをしているため、大切なデッキデータやアバターを奪われたくないユーザーはどこにもいない。そうなると標的を求めてハノイの騎士が集まる。そして人工デュエリストとハノイの騎士の抗争を安全なところで観戦できる上に自分たちは安全にスピードデュエルができるという状況ができあがる。このイベントの主催者はなかなかの技術者のようで、今のところ外部から内部に不法アクセスする方法が浮かばないのだった。だからワナビーは参加者の一人としてここにいるのだ。ゴーストとして活動するならどの道密偵は必要だろう。


「そーいやさ、アナザー事件の時から全然リボルバー出てこないけど何してるんだろ?」


ジト目のブレイブマックスにワナビーは目をそらす。汗がつたう。だらだらである。なにを今更とHALは冷ややかな目を向けている。


「う、うーん、どうなんでしょう?」

「playmakerをハノイの騎士が探してるのにリーダーが出てこないって変だよな」

「そうですね。ふふ、ブレイブマックス、二人のデュエルが見たいんですか?」


ウィンに問われたブレイブマックスは照れ気味に笑った。


「え?あ、あはは、やっぱわかる?いやーだってさー、二人のデュエル、いっつもカメラが回ってないとこでのデュエルになっちゃうだろ?俺一度も見たことないんだよ」

「そうですよね、私も見てみたいなあ」

「僕もみたいですよ」

「だよなー……って、待て待て待て、ごまかされねーぞ、ワナビー」

「へ?」

「なんでリボルバーのエース使ってんだよ、お前」

「な、なんのことでしょう?」

「《トポロジック・ボマー・ドラゴン》だよ!なんでそんなすげーカードお前もってんだよ!」

「あっ、そういえば!そうですよ、ワナビーさん!どうしてそんなすごいカード持ってるんですか?まさかコピーカード?」


やっぱりー!とワナビーは冷や汗だ。HALはイグニスの所持するカードたちのデータバンクなのだ。誰かが入手すればそのデータを更新する。playmakerとは同期しているし、一時的にリボルバーからデータを抜かれた。その報復としてハッキングしたときにカードバンクのデータもついでに拝借したのだ。ひとつしかカードを同時に使用できなくてもコピーデータさえあれば使用は可能だ。なんのためのデータバンク、なんのためのHALなのかという話である。

HALがようやく再現が完了したと教えてくれたため、ついつい調子に乗ってしまった。


「あはは……実はもうすぐ実装する予定みたいですよ、《トポロジック・ボマー・ドラゴン》とか《ファイアーウォール・ドラゴン》。ほら、僕テストプレイしてるじゃないですか」


近からずも遠からずだ。サイバース族はもともと実装されていたのだ。ハノイの騎士に襲撃されるため誰も使わなくなったせいで知名度が低かったがplaymakerが使用し始めてから使い手が増えた。もっともハノイの騎士の標的になるのは変わらないため、どのみちリンクヴレインズでもリアルでもつかう人はいない。姉がハノイの騎士による妨害がなくなればあのカードたちを実装することも検討の余地ありと話していたはずだ。

「あのうらやましすぎるバイトか!くっそー、なんでちゃっかりもらってんだよ!」

「もらってないですよ、すぐに返さないといけないです」

「エクストラデッキに入れてる時点で自慢する気満々じゃねーか!」

「えへへ、使います?」

「え、いいのか?」

「はい、ブレイブマックスならいいですよ、特別に」

「ほんとか!やった!」


だがブレイブマックスの脳裏によぎるのはアナザー事件である。playmakerのカードを使用したことでひどい目に遭ったことがよぎる。


「や、やっぱやめとくわ」

「え?」

「そのうち実装されるんだろ?ならいいや」

「そうです?わかりました。ただ《ファイアウォール・ドラゴン》、強すぎるから制限になるかもしれないっていってました、お姉ちゃん」

「え、マジ?」

「はい、まじです」

「そっか、まあplaymakerのエースだしその方がいい、のか?ワナビー、ハノイの騎士が喧嘩売ってくるのってもしかしてお前のせいか?」

「さ、さあ?」

「おいこら、もっかい俺の目を見ていってみろ」

「や、やだなー近いですよブレイブマックス!」


すでに会場は大盛り上がりだった。どこかで見たことがあるような成り切りアバターであふれている。

そんななか一番人気はライロだ。墓地肥やしが強力な上に汎用の高い効果だからだろう。


「やあやあ、そこの君、デュエルしていかないかい?!」

「ぶふっ」


ワナビーは吹き出した。そこにはどこかで見たことがあるアバターが挑戦者を待ちわびているのがみえた。スポットライト独占である。


「え、え、ゴースト!?なんでここに!」

「え、ゴーストってあの?」


ブレイブマックスとウィンは動揺する。


「お姉ちゃん!?なにしてるんだよ、こんなとこでえっ!」


2人の視線が突き刺さるがワナビーは叫ぶしかない。彼女はワナビーの叫びに気づいたのかウインクを飛ばした。


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bkm






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