長い足で大きくブランコを一振り
ブランコの軋り音は、たえず聞こえる。きいっ、きいっ、きいっと金属のこすれあう規則正しい音と錆びた鉄のぶらんこが揺れる音がする。広場を囲んだ樹々が仄かな街頭の光を受けて、寒々と立ち竦む。樹木の枝が影を作る人影まばらな冬の公園は、潮が引くように賑やかさの終わろうとしていた。夜の緑の匂いでむせかえるようにしている。たくさんの樹木がジャングルのように植えられた公園は、人影はなかった。
真ん中に水銀灯が一本高く立っていて、その明かりが公園の隅々までを照らしていた。水銀灯の無個性な光が、ぶらんこや滑り台や砂場や、鍵のかかった公衆便所を照らし出している。水銀灯の光が小さな児童公園の風景を青白く照らし出している。その風景は青豆に夜の水族館の無人の通路を連想させる。目に見えない架空の魚たちが樹木のあいだを音もなく泳いでいる。
そこに訪れた和波は、カフェなぎのトレーラーを訪れた。そしてそのままリンクヴレインズにダイブする。
「ワナビー、検査帰りで悪いが来てくれないか」
playmakerからの呼び出しにワナビーは応じた。
「ブルーガール!?......あ、あれ、その姿は?」
「それにアクアも一緒じゃねえか、どうしたんだよ」
「今の私はブルーメイデンよ」
「えっと?」
「というか、どうして和波く.....ワナビーがここにいるの?」
「今、僕たちは協力関係にあるんですよ、グレイ・コードがライトニングたちに加担してて」
「言ってくれなかったじゃない」
「ごめんなさい、playmakerに内緒にしろって」
「まあ、私もゴーストガールと一緒に活動してること秘密にしてたからお互い様だけどね」
「あはは。実は僕にもイグニスがいるんです。アイくんから生まれたHALっていうんですけど」
「よお、水のイグニス。はじめましてだな、よろしく頼むぜ」
「はじめまして、HAL」
「一体何があったんです?」
実はね、とブルーメイデンは語り始めた。
家なき子となり兄が迎えに来るまで公園で遊んでいた頃の悲しい思い出。美優という友達ができて、仲良くなった矢先のすれ違いと別れ。アクアによる美優がロスト事件被害者となりアクアのパートナーとなったこと、ライトニングの襲撃により意識不明となり入院しているということ。アクアは美優を助けるため、葵に助けを求めて協力関係になったこと。playmakerとsoulburnerはそれを知り、仲間になったこと。葵はもともとゴーストガールと組んで財前晃のために活動しているため、広義的に見れば仲間がたくさん増えたことになる。
「なるほど!僕はHALがいるので、ライトニングたちのことがあってから、ずっとplaymakerたちと行動しているんです」
「そっか。通りでplaymakerが連絡先を知ってるわけね。はじめまして、ワナビー」
「はい!よろしくお願いします!」
「ところでHALはハルとなにか関係あるの?」
「ねえよ。ボーマンといい、元ネタが同じだけだ。あっちにパクられたんだよ、俺様は5年前からこの名前なのってんだよ」
「ふうん、そうなんだ。本当にアイから生まれたの?全然性格違うのね」
「バックアップ機能がイグニスの特性で自我を持ったわけだからな。俺様はどっちかってーとボーマンやハルみてえな生まれだ。もとの能力的にそいつらとは違ってイグニスの特性も引き継いでるがな」
「貴方もアイと同じように共生の道を模索してくれるのでしょう?ならば心強いですね」
「ま、そういうことだ。よろしく頼むぜ」
「はい」
不霊夢、アクア、そしてアイは共生派。ライトニングとウィンディは敵対派。本来共生派になってくれるはずだったアースはSOLテクノロジー社により抹殺されてしまった。綺麗に二分されたイグニスたち。そこにハノイの騎士というイグニス抹殺派がいる。ややこしい三つ巴になりそうだった。