イグニスについて

イグニス、それはSOLテクノロジー社、及びハノイの騎士に追われている、意志を持ったAIプログラムのことだ。全部で6体存在し、デュエルモンスターズのカードと同じく6つの属性がある。

「でも神属性あるから、対応してるとしたら僕たちの知らないイグニスがいてもおかしくないよね」

和波はぽつりと呟いた。7つめの属性である神属性は、かつて決闘王だけが使用していた三幻神及び《光の創造神 ホルアクティ》の属性だ。神属性のアイコンは光属性のアイコンと同色で、文字とルビを変更した物だ。姉はかつて決闘王とデュエルしたことがあったが、それらのカードをデュエルの中で引き出すことはできなかったはずである。

「まあ、出てきた時はそん時だろ」

HALは笑うだけだ。イグニスたちはネットワーク上にサイバース世界という独自の世界を作り出し、そこで暮らしていた。 彼らが作り出すデータマテリアルはネットワーク世界の進化に大きく貢献し、その結果誕生したのがリンクヴレインズである。

しかしある時、ハノイの騎士がサイバース世界を襲撃し、イグニスの1体がサイバース世界への入り口を隠して逃亡。その結果、イグニスを滅ぼそうとするハノイの騎士と、データマテリアルが必要なSOLテクノロジー社の双方から追われる身となった。

その正体は鴻上聖博士が、将来人類を新たな進化へと導く後継者として作り出した存在であり、彼らを生み出すために藤木遊作ら6人の子供を拉致・監禁し、デュエルを強制する生活を強要、そのデータを収集するロスト事件を引き起こした。

しかし、鴻上博士のシミュレーションの結果、イグニスがやがて人類を管理し、滅ぼしてしまうという結果が出たことからイグニスの抹消を決意。そのために結成されたのがハノイの騎士だった。

ハノイの騎士壊滅後、アイがサイバース世界に戻るが、謎の敵の襲撃によって滅ぼされた後であり、他のイグニス達も散り散りになってしまっている。それがイグニスを取り巻く今の現状だ。

AIのくせに計算が遅かったり、感情的になったりと、普通のAIとは一線を画す性能を見せている他、近くの人工知能に自我を持たせてしまう性能を持っているのだ。

「ねえ、アイくんやアースくんのいってることってほんと?」

「あー、イグニス同士が対立する事は無いので、サイバース世界を襲うのは人間しか思いつかないってやつか?」

「うん」

「それについては俺様も賛成だぜ」

「そっかあ」

和波は思考に耽る。

アイは藤木遊作を素体にした闇のイグニスだ。管理番号は「IGN006」。メインカラーは紫。

不霊夢は穂村尊を素体とした炎のイグニスだ。メインカラーは赤。

ウィンディは新生リンクヴレインズの進入禁止エリアに潜んでいた風のイグニスで、メインカラーは緑。 サイバース世界崩壊が原因で人間を信用しておらず、ロスト事件のパートナーを探さずにエコーという人工知能をパートナーにしている。

アースは今回遊作たちに接触を求めた地のイグニスだ。メインカラーはオレンジ。 真面目だが不器用な性格をしているらしく、不器用な事に自覚がある。 アクアの「真実を見極めろ」という言葉に従い、Aiと行動する遊作とのデュエルを希望したため、今まさにデュエルが行われている。

「スペクターのイグニスなのかなあ」

「かもな、あいつの使用デッキは地属性だ」

「でもアースのデッキを使ってる訳じゃないよね、soulburnerみたいに」

「まあたしかにな」

アクアは水のイグニスだが、アースによれば消息不明である。メインカラーは青。イグニスのサブリーダー格であり、嘘と真実を見抜く特殊な力を持つ。彼女の存在がサイバース世界での裏切り行為を抑制していたとされる。 しかし、アースに対して「サイバース世界はいずれ分裂する、その時は人間とイグニスのどちらに付くか」と告げている。嘘と真実を見抜く彼女が何故このような言葉を残したかは現時点で不明だ。

「あとは光のイグニスかあ」

こちらも消息不明だ。イグニスのリーダー格であり優秀であったが、あまりに高度な考えであったのか同じイグニスのAiでも理解できなかったとの事。彼の体の模様はどことなくボーマンに似ているのが気になる和波である。

「ボーマンてさ、人工知能だったりしない?」

「光のイグニスってか?」

「ウィンディやアースのパートナーみたいな感じでさ」

「あー、学ばせてるってか?」

「うん、そんな気がする」

ボーマンは新生リンクヴレインズに現れた謎のデュエリストだ。全身金色の人影のような姿で現れ、現実世界にいる草薙翔一の弟・草薙仁の前に突如現れ、彼の記憶を奪い取ってリンクヴレインズ内に逃走した彼の行方は未だにしれない。なぜ彼が狙われたのかも。

「光のイグニスの仕業なら辻褄が合うかなって」

「そいつらが誰かと組んでなきゃな」

「グレイコードは少なくても噛んでるね」

「そっから調べてみるしかねーな」

「うん」

和波はためいきをついた。

「ハルってやつが怪しいね」

「俺様と名前の由来が同じなら尚更な、あいつが光のイグニスな可能性があるぜ」

和波は思い出す。ボーマンは自分が何者なのか、なぜ自分が今デュエルをしているのかすら把握していなかったが、ボーマンの弟を名乗る少年・ハルからの通信を聞いて、自分の名前と、自分が記憶を取り戻すためにある人物から命令を受けたことを思い出し、Playmakerとのデュエルを続行した。デュエルには敗北するが、ハルのサポートでPlaymakerを振り切ってLINK VRAINSの進入禁止エリアへと逃げた。ハルの思わせぶりな発言からして、ボーマンはこれまでに何度も記憶をリセットされ、利用されていることが伺える。

その後、再び記憶の調整を受けた彼は、進入禁止エリアに存在する「風のワールド」へと追ってきたPlaymakerと対峙した。以前と違って自信に満ちた態度でデュエルに臨み、戦術も前回のデュエルとは比べ物にならないほど高度なものになっていた。

そしてボーマンはPlaymakerとAiに対し、ロスト事件の裏に隠れた真実と称した、自身の身の上を語る。
その内容は、「今の藤木遊作の人格は、ロスト事件中に作られた遊作の記憶データのバックアップから作られたレプリカであり、実験中の不慮の事故で本物と入れ替わった」「自分こそが遊作の本当の人格である」というものだった。

遊作もロスト事件時の記憶が曖昧なため、事件中に何者かに記憶を操作された可能性もゼロではないとボーマンの主張を完全に否定することはしなかったが、ボーマンの語る過去の記憶には、ロスト事件直前に出会っていたある人物の存在が抜け落ちていたことから、自分の記憶が正しいと確信。

「Playmakerの手の内をすべて読んでいる」と豪語するボーマンの戦術をさらに上回り、撃破する。
しかし、デュエル直後風のワールド自体が崩壊を始め、その崩壊のどさくさで姿を消したため、仁の記憶データは取り返せずじまいとなった。


これでボーマンはPlaymakerの不屈の闘志を学んだと、ボーマンの敗北を予期していたかのような発言をしているハルは要警戒である。

「人工知能に繰り返し学習させるのが今の敵のトレンドなのかなあ」

そこに精霊プログラムが絡んでいるか否か。HALがばらまいたゴーストに挑んでくる特定デッキに仕込まれたウィルスに感染したユーザーたちとのデュエル記録。これを精霊あるいは人工知能に搭載したらどうなるか考えたくもない和波だった。


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