If Story

▽ 2*


「反対側もしてあげようね」

二つ目の氷が溶けきってホッと息をついた葵にそう声を掛けると、彼の頬を静かに涙が伝う。まだ始まったばかり。何度も繰り返した遊びだ。葵はきちんと理解している。

右と同じように、左も氷二つ分冷やしてやれば、葵は頬を染めて息を上がらせていた。

「おかしいね。どうしてこんなに火照っているんだろう?」

氷を摘んでいた馨の指先は当然冷え切っている。それなのに、触れた頬は驚くほど熱い。葵側もその温度差は実感したはずだ。馨の視線から逃れるように目を伏せてしまう。

「まだ足りないのかな」
「……ん」

再びアイスペールに手を伸ばせば、葵は小さく喉を鳴らした。馨の手により、体を疼かせ、静かに悶える姿が可愛くて仕方ない。

先程はただ氷を当てわずかに揺らす程度だったが、今度はもう少し強く刺激を与えてやる。

「ぁ…っ、ん……あぁ」

砕かれて鋭利になった氷の先で敏感な箇所を突いてやると、葵の爪先がシーツを乱した。その反応を視界に入れながら、ぎゅっと突起を潰すように氷を押し込み、ゆるゆると円を描く。

「んーッ、あっ、あっ」
「どんどん溶けてく。熱が引いてないね」

それが何故かなんて答えは分かりきっている。それでも葵はただ馨の言葉を従順に受け入れるしかない。

反対も同じように葵を高める刺激を与えてやると、濡れきった胸は腫れが引くどころかツンと主張し続けている。馨に直接触れてもらうのを健気に待ち侘びているようだ。

「今夜は仕事に戻らないと」

ほんのりと汗ばんだ葵の額に掛かる前髪を払ってやりながらそう告げると、葵は切なそうな顔になる。中途半端に放置されると、熱を自ら解放する手段のない葵は眠れぬ夜を過ごすことになるからだ。

でもそこまで焦らす気はない。小さく立てた膝を擦り合わせて耐えるその中心を、楽にしてやるぐらいの時間は残っている。

馨が言葉とは裏腹にパジャマのズボンに手を掛けると、葵は予想外だったのか驚いた素振りを見せた。下着ごとズボンを下ろし、無防備に晒したそこはやはり胸への刺激だけでゆるやかに勃ち上がっていた。

「今日は葵だけ、ね」

馨自身もベッドに乗り上げ、葵の腰の下にクッションを一つ押し込んだ。解放されたがっている場所をより可愛がりやすくするためだ。

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