If Story

▽ side馨*


ベッドサイドのランプだけが灯る寝室。柔らかな光が照らすベッドの上には、怯えた顔をする葵がいた。これから馨に何をされるのかよく分かっているから、シーツを掴んで泣きそうな顔をしている。

パジャマは既にボタンを外され、白い半身が露わになっていた。その中で薄紅色はよく目立つ。

「まだ腫れが引かないみたいだから、ね」

本来なら肌に溶けるほど淡い色をしているはず。今日はまだロクに触れてもいないのに、紅く色づいているのは葵の体が愛撫を期待しているからではない。昨日たっぷりとそこを可愛がったからだ。

試験が終わったご褒美に大好きな場所に触れ続けてあげたのだ。週末貪りすぎた反省を活かし、葵を無理に抱くことはしなかった。その代わり、ただそこに触れ、吸い上げ、何度も何度も絶頂を迎えさせた。その結果がこれだ。

サイドテーブルに置いたアイスペールには、小さく砕いた氷が入っている。それに手を伸ばせば、葵は諦めたように息を吐いて、固く目を瞑った。

「んんッ……ん」

摘んだ氷を胸元に当ててやれば、重ねたクッションに預けた葵の背がぴくりと跳ねる。

「声を出してもいいんだよ」

耐えるような仕草をたしなめれば、葵は馨を見つめて頷いた。こんなものにすら愉悦を見出す己の体が怖いのかもしれないが、そういう風に育てたのだから何も恐れることはない。

「……ぁ、あぁ、ん」
「気持ちいいね、葵」

あくまで腫れを癒すように、ゆっくりと氷を突起に擦り付ける。固く冷たい感触にそこが立ち上がってしまうのは生理的な現象でもあるが、葵は間違いなく感じていた。

小さな氷が葵の体温で溶け切るにはそれほど時間を要しない。肌を水が伝う感覚にも葵は背を反らして堪らなそうにしている。

「っ…あ……はぁ」

二つ目の氷ももう一度同じ場所に当ててやる。麻痺をさせるつもりはない。そのギリギリのラインで、葵をただ悦ばせてやりたいだけ。

葵の体に初めて快楽を覚え込ませたのはこの部位だ。くすぐったさの先にあるものを見出させるために、丹念に時間をかけて育て上げた。

初めはその過程で腫れた箇所を純粋に癒してやる行為だったが、葵が段々と愛らしい反応を見せるようになり、今では胸を徹底的に苛める時は、その後この氷での戯れを行うまでがセットのようになってさえいる。

ただ氷をそこで溶かしている行為。直接の愛撫とは違い、葵は乱れすぎることもなく、甘く息を吐き、シーツの上の体を小さく捩る。


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