If Story

▽ side馨*


窓の外に広がる真白い雲の海。最も好きな色が広がる光景に、馨の機嫌は随分と良かった。ようやく生まれ育った国に戻れる、その事実も馨を喜ばせる。

「葵、嬉しい?日本に帰れるの」

膝の上に抱いた息子に声を掛けるが、返答はない。こちらを向く表情は少しだけ困ったような微笑み。

葵は日本で過ごした時間よりも、アメリカでの時間のほうが長くなってしまったのだから故郷という感覚もないのかもしれない。

「学校に通うのは不安?」

次の問いかけに、葵は小さく頷いた。綺麗に整えたブロンドの髪が眼前でさらりと揺れる。

大事に育てた馨だけのお人形。汚いものに触れさせないよう、ほとんど家から出さずに過ごさせてきた。勉強だけはきちんとさせていたから、日本の教育にもついていけるだろうが、いきなり高校生活を送れるとは思えない。

「私も心配だよ、葵を外に出すのは」

日本でも馨は葵をずっと部屋に置いておくつもりだった。けれど、それを父から咎められ、きちんと高校を卒業させるよう約束させられてしまったのだ。父は葵をいずれ後継に、と考えているようだが、この世間知らずの無垢な子を見ても同じことが主張できるのだろうか。

「悪い虫がつかないか心配だな。葵は可愛いから、気をつけないと」

金糸の間からちらつく白い耳たぶに吸い付けば、途端に朱に染まる。何度繰り返したとて愛らしい反応を見せるからもっと苛めたくなるというのに、ちっとも学習しない。

「向こうにつくまで、まだたっぷり時間はある。少し遊ぼうか」

はじめからそのつもりで膝の上に招いていたのだが、葵は馨の誘いに素直に頷いた。馨の好み通り、従順に育った可愛い葵。

ウエストに回した手を、手触りのいいシルクのブラウスの上へとゆっくり滑らせていく。ただそれだけで肩を震わせる敏感な体。長い時間掛けてじっくり仕込んだ成果だ。

「ん……ッ」

薄い胸をまさぐると、馨の指にツンと引っ掛かる小さな突起が見つかった。そこを爪で引っ掻くと、まるでもっと触ってほしいと言わんばかりに更に立ち上がるのが分かる。

「可愛いね。いつから尖らせてたの?」

馨の意地悪な問いに、葵は頬を紅く染めて俯いてしまう。機体が安定し膝の上に招いてからずっと、首筋にキスを落としたり、内腿をさすっていたのだ。きっと戯れに慣れた体は自然と更なる刺激を求め、反応していたに違いない。

「こうしてパパ以外に触れられても、葵は気持ちよくなっちゃうのかな?どうだろうね」

馨だけにこうならいいが、誰にでも淫らに鳴かれると困ってしまう。他人に食わせるために育てたわけではない。

「んッ…ん……んん」
「葵、ここにはパパしかいないよ。声聞かせてごらん」

今回の移動に使う飛行機は丸ごとプライベートな空間。馨一人ならば一般の便を使ってもいいが、葵を連れるなら別だ。わざわざ用意したのだから、それを無駄にしないでほしい。

「葵?」
「あ、あぁッ…や、あ……ん」

口元を手で押さえた行動を咎めるために、布ごしに胸の突起をきつく摘めば、葵はすぐに反省して可愛く泣き出した。

痛かったのだろうが、それさえも葵には気持ちが良かったはずだ。

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