夏音2

 
「もう夏になるんだね。窓も寂しいから風鈴飾りたいんだけど」

「そうですか。ならこんなのなんてどうでしょか?」

そう言うと金魚がくるりと回り、どこからか泡ができ中には風鈴が入っていた。
猫が手を差し出せばパチンと弾け、手の上にへと落ちた。

「こういう花柄なんていかがでしょうかね」

透けるガラスに散りばめられたオレンジ色の花柄でかわいい感じの風鈴だ。

「笥朗はんに似合いますよ」

「ちょっとかわいすぎない?」

「そんなことないですって。これは笥朗はんに差し上げます」

「いいの?」

風鈴を受け取り、お代を渡そうとする笥朗の手を猫はやんわりとかえした。

「はい。また笥朗はんのギター聞かせたくださいな。お代はそれで」

「俺のでよかったらいつでも弾くよ」

「楽しみにしておきますね」

そう言い、猫はよっこいしょ、と竿を担ぎなおすと一礼をした。

「ではうちらはこれで、また遊びにきますわ」

「それでは笥朗さんまた」

猫は高く跳び、屋根の上へと飛び乗った。
そのあとを金魚も続いて泳いでいく。

遠ざかる風鈴の音を聞きながら、笥朗は窓にもらった風鈴を飾った。

「今年は夏の音が響くね」

 

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