#2 隣の敵と目の前の敵



(エース、おきておきて、ぱぱをかいたの)
(んあ?・・・・・・おお、うまい、うまい。このピンクの髪なんてオヤジそっくりじゃねえか、くくくっ)
(おやつ出来たぜ。おやつ食べながらトキ大先生の力作を見ようじゃないか)
(サッチー。おやつなにー?)



何処から持ち込んだのか分からないが、パラソルと洒落た白いテーブルと椅子に座り、穏やかな晴天の海風を受けているトキに高頻度で突き刺さるのは隊員からの敵意。

白ひげの部屋でトキは2人きりで話をつけていた。そして、周りが見守る中、出てきた2人の口から出されたのは

「この小娘を客人として扱え。それとエース、どうしてもティーチを追うならこいつを黙らせてから行け」

「勝てないからって子供みたいな嫌がらせはやめてくださいね。報復を一々するの面倒ですから」

さあ、恨め、憎めとモノクロな娘は笑った。







「エース、また負けたのかよい」

「っるせー」

看板に転がるエースを見やった後に、何処から持ってきたのかティーセット出紅茶の準備を始めるトキを見やる。客人として白ひげの船においてはいるが、大事な客人、という扱いではない。部屋は本人の希望と挑発により「エースが寝込みを襲って、周りの安眠を妨げないように隣の部屋にお願いします」といい、嫌がらせで倉庫をあてがおうとしたのに普通の部屋になった。が、食事は3回だけ。お茶の用意など以ての外。
きっと、トキの能力だろうと結論づけた。

エースの火も、拳も届かない。
連日挑んでも、トキの能力は打ち負かせられない。
彼の胸に、苛立ちが降り積もっていく。
いっそのこと、トキの目をすり抜けてティーチを追えばいいと思うが、時を操る能力を何とかしなければ、生きている仲間の安全の保証はない。そして、エースの思考を呼んだかのようにトキは「なんなら、白ひげが生まれてきた瞬間を殺そうか?」と言う。・・・・・・安い挑発だ。そう、白ひげは笑い飛ばす。

「あいつは何がしたいんだよ」

「お前を救いたいんだと」

「ちっ・・・・・・」

帽子をテーブルに置いて、まったりと紅茶を飲むトキをエースが睨んだ。その視線に気づくと、また温度のない瞳でトキは「飲みます?」とカップを持ち上げて見せた。

ひとつ、ひとつの挙動がエースの神経を逆なでする。





「敵襲!敵襲!」




見張り台から高らかに声が響く。上を見上げて、見張りが指す方向を見るとそこにはこちらへ近づいてくる船。ドクロマークを掲げてこちらまで、帆ではなく船の横から海面に延びるオールでこちらまで来る。白旗も信号弾もない。

敵船側の縁に近づくエースたち、そこにはトキも来る。

「まさか、命を救うためだーとか言って戦いの邪魔をするんじゃねえよな?」

「え?あれにエース負けるの?なら、代わりに戦うけど・・・・・・」

「はっ、そんな訳ねえだろ」

「客人も戦うのかよい?」

「そうだよい」

「真似をすんじゃないよい」



敵の敵は味方?いいえ、違います。




「どさくさに紛れて私に攻撃をしてくれてもいいよ」

「そんな卑怯なことをするか。やるなら・・・・・・正面からだ」

「さすが」

トキが「着いてきて」と、悪魔の実の能力者なのに海面に向かって飛び出した。じゃぶんっ、と音はなくエースとマルコや駆けつけた船員たちが見ると海の上にトキは立ってる。その足場は時が止まったように動かない海。

「敵の船をこちらまで早送りしてもいいけど、掃除が大変だしね。波の動きに気をつけて、着いてきてね。そんなに時間は止めないから」

こつこつと海面をかかとで叩く。

「じゃあ、私が敵船まで一番乗りー!」

と、走り出したがエースが縁を乗り越えて駆けだした。

「俺が一番乗りだっつーの!」

「じゃあ、競争しましょう、そうしましょう。負けた方が次の島で奢ってくださいね」

「乗った」

ひゅんっ、と風を切る音が頭上にあった。

「「あ・・・・・・」」

2人が見上げて、それを、目で追いかけると「青い鳥」は敵船に降り立った。
マルコが近くにいた敵を吹っ飛ばすと、エースとトキを振り返ってにやりと笑った。

「・・・・・・後から来た方がマルコに奢る!」

「はあ!?」

ラストスパートをかけて、乗り込む。

「火拳」

「えいっ、やあ!」

「能力じゃねえのか」

「あれってすごく疲れるの」

「仲良く話してないで、手を動かすよい」

「仲良くねえ!」

「ふふふっ」



(てきせん!てきせん!)
(お前はお留守番。お・る・す・ば・ん)
(トキちゃん、ほら、私たちと待ってましょう?)



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