side:ルーエル



「ね、ねぇ、エレフっ!この格好変じゃない?!」
「あぁ、似合ってるよ。」
「本当?!本当に?!こんなに足出して大丈夫かなぁ...メンチちゃんが恋人とが会うときはこれ着なさいっ!って言って買ってもらったんだけど、、うぅ...丈が短いよぅっ!!」
「大丈夫だって。そんなにミニってわけじゃないし、清楚な感じでルーエルにあってるよ?」
「そうかなぁ...いつもロングドレスしか着てなかったから不安で...」
「そこまで不安にならなくて大丈夫だってば。ちゃんと可愛いよ。」
「うぅっ、だって、シャルがっ!シャルがっすぐ近くの公園で待ってるって!!メールが!!」
「うんうん、そうだね。不安と焦りがあるのは仕方ないけど、4年ぶりに会う恋人を待たせていいの?」
「はぅ...。ほ、本当に大丈夫?この格好、変じゃない?」
「大丈夫だよ、自信持っていいから。ほら、買い物袋持つから貸して。早くホテル出るよ。」
「うぅ、、はぁい。」




















「お世話になりました。」
「うむ。これからは一人のハンターとして世に貢献するように。」
「ふふ、そうですね。情報屋として貢献したらダブルハンターとかシングルハンターの称号頂けます?」
「働き次第じゃな。」
「頑張りまーす。」

髭を撫でるネテロさんに対し、悪戯に敬礼のポーズを取り、笑う。

「フレイヤ!」
「メンチちゃん!それに...サトツさんとブハラさんまで。お見送りに来て下さったんですか?」
「えぇ、会長に挨拶をしていると聞いて我々もと思い。」
「この後お伺いしようと思っていたんです。足を運ばせてしまってすみません...」
「いやいや、いいよ。俺達が君を見送りたかっただけだし。」
「そうよ!それにしても...似合ってるじゃないその服!さっすが私ね!」

メンチちゃんは私を上から下まで眺めると、満足そうに頷き胸を張る。
そんな彼女に思わず照れ笑い。

「こんなに短い丈のスカートを履いたの初めてだから、なんだか恥ずかしいわ。」
「何言ってんの!アンタ綺麗な脚してるんだから出していかなきゃ!」
「メンチ、その発言はオッサンぽいよ。」
「うるさいブハラ。」

ドスっとブハラさんのお腹に肘鉄を食らわすメンチちゃん。
うっと小さく呻き声をあげたブハラさんだけど、そこまでダメージは無さそう。あの厚いお腹はなかなか破れそうにないな。

「・・・この後、会いに行くの?」

『誰に』とは言わなかったけど、メンチちゃんが誰のことを指しているのかは分かった。
私は穏やかに微笑み、頷く。

「うん、連絡が取れたの。」
「そっか。良かったわね。」
「うん!」

満面の笑みで頷けば、メンチちゃんも優しく笑ってくれる。
そして私のほっぺたをぐにーっと両手で引っ張ると、このリア充め!と恨めしそうにぐにぐに動かした。

「いひゃいいひゃいっメンヒひゃんっ!」

なんとも間抜けな声を出す私に満足したのか、メンチちゃんは私のほっぺたから手を離すと、そっと腕に触れトントンと叩いた。

「幸せになりなさいよ。」

その言葉にどれだけの思いが詰まっているのかを感じ、きゅっと胸が詰まる。
試験が終わった日、ホテルの温泉でメンチちゃんと話した事を思い出す。

「うん。・・・メンチちゃん、本当にありがとう。
あの時のメンチちゃんの言葉があったから、私、覚悟が出来たよ。
ちゃんと、大切な人達と向き合えた。ちゃんと...笑ってお別れが出来たよ。」

そう言って笑えば、メンチちゃんは何も言わずに笑って頭を撫でてくれた。

「ブハラさんも、ありがとうございました。」
「これから頑張ってね。そして、同じハンターとしてこれからよろしく。」

私の頭を包めるくらい大きな手を前に差し出すブハラさん。
私はその手を取って、こちらこそ、と笑った。

「サトツさん。試験が終わった後、ゴンの傍に居てくれたのはサトツさんですよね?」
「えぇ、そうですよ。」
「ありがとうございます。サトツさんだったから、ゴンは自分の合格を受け入れ前を向けたのだと思います。説得、大変だったでしょう?」

そう言ってクスクス笑えば、サトツさんも目を細める。

「試験での頑固さを見てましたからね。ですが、彼は賢い。自分に何が必要かを彼はしっかりと理解していました。
『大事なのはハンターになってから何を成したのか』
この言葉を言った時、彼はすぐにその意味を理解しハンターライセンスを受け取りましたよ。」

その時を思い出しているのだろう。サトツさんの目はどことなく嬉しそうだった。
そんなサトツさんに、改めて感謝を述べる。


そうして私達は、最終試験のホテルを後にした。









 * *









「んじゃ、俺はここで!」
「え?!」

広場を目の前にして、エレフは突然足を止めてそう言った。

「一緒に行かないの?」
「いやいや、流石に4年ぶりに再開するカップルのお邪魔虫にはなりたくないからね。」
「お邪魔虫だなんて思わないわよ...。」

ぷぅ、と頬を膨らませればエレフは苦笑する。

「(ルーエルは気にしないかもしれないけどなぁ。シャルナークはどうか判らないし。
なにより甘い雰囲気とか見せられたら俺のダメージでかそうだし。)
ちゃんとシャルナークには会うよ。だけど、やっぱり最初に顔を合わせるのはルーエルじゃなきゃ、ね?」
「う...ん..。」
「落ち着いたらこの先にある喫茶店にシャルナークと来てよ。そこで俺も挨拶する。」
「そっか..。分かった。」
「緊張してる?」
「とっても。」
「はは、そうみたいだね。」

エレフは可笑しそうに笑うと、私の前にスッと手を差し出した。
首を傾げつつ、その手を見る。

すると、ポンッ!と小さな音を立てて目の前にピンク色の可愛らしい花が現れた。

「わっ!」

驚いて思わず小さく声を上げる。
そんな私に、成功だ、とでもいうように満足気に笑ったエレフ。
そしてエレフは、初めて出会った時ようにその花を私の髪に差した。

「うん、似合う。可愛いよ、ルーエル。自信を持って会いに行っておいで。」

そう言って私の背中を押すエレフに、少しだけ緊張が解けた気がした。

「うん、いってきます!」

笑顔で広場へと一歩踏み出す。
そしてエレフへと振り返り、

「エレフ!――ありがとう。」

穏やかにそう告げて、今度こそ前を向いて歩き出した。
















そんなルーエルの背中を、俺は見えなくなるまで見送っていた―――。















広場へと足を踏み入れる。
中央に噴水があり、その周りには等間隔に並んだベンチ。
広場は木々に囲まれ、色とりどりの花が花壇に植えられていた。

夕焼けでオレンジに染まる風景の中に、さらりと揺れた金色。

一際輝いているその色に、私の視界は奪われた。
ザァァ...と吹いた風の音だけが耳に響く。

一陣の風に驚いたように顔を上げ、踊った髪を抑える青年。
彼は、風が収まると同時に私の方へと顔を向けた。



目が、合う。



金色の髪の青年の瞳は、エメラルドグリーン。
4年前と変わらないあどけない顔をした彼が、そこにいた。

そう、間違えるはずがない...。

目の前の彼は間違いなく―――、



「シャ...ル――――っ!」



込み上げる涙と同時、私は彼へと駆け出していた。
加減なんて出来るはずもなく、駆け出した勢いのまま彼へと抱き着く。
ほぼ体当たりと言っても過言ではないかもしれない。
それでも、彼はよろめく事なくしっかりと私を抱き留めてくれた。

―――そう、4年前と同じように。


その逞しさに、その温もりに、

『あぁ、帰ってきたんだ。』

心から、そう思った。




『久しぶり!』『元気にしてた?』『会いたかったよ。』

シャルに会ったら言おうと思って頭の中でたくさん練習した言葉。
そのどれも、声にすることは出来なかった。
ただただ、彼の腕の中で涙を流し続ける。

彼も、ただただ私を抱きしめていた。
痛いくらいの力が込められたそれに、だけどその痛みさえも彼を感じさせるもので―――。



お互いの存在を確かめ合うように、私達は少しの間そうしていた。









 * *









「元気にしてた?」
「うん。シャルは?」
「俺は・・・内緒。」
「なにそれ!・・・病気?」
「はは、病気はしてないよ。・・・ルーエルが心配でしばらくは元気なかったかな。」
「―――!・・・ごめん、なさい。」
「ううん。俺の方こそ...守れなくてごめん。」

グッと拳を握り込んだシャルの手にそっと触れ、首を横に振る。

「自分を責めないで。それに、シャルはちゃんと守ってくれたよ。」

そう言ってそっと指輪に触れる。

「ヒソカに捕まった時にね、この指輪が私に勇気をくれたの。シャルの言葉を思い出して、私は冷静になれたんだよ。ちゃんと正しく、自分の持つ力を使うことが出来た。」

そう。いつだって、シャルは傍にいてくれた。
離れ離れになってからも、私の中にシャルの温もりはずっと残っていたの。

この、指輪と共に―――。

「ルーエル・・・。本当に...っ、生きてて良かった。」

絞り出された言葉に、私の失踪はずっとシャルを苦しめ続けてきたのだと改めて実感する。
もっと早く連絡を取っていれば...。
その後悔が私の胸を締め付けた。

「心配をかけて、本当にごめんなさい。これからはずっと傍にいるよ。
・・・ううん、傍にいさせて下さい。」

きゅっとシャルの両手を握り、そのエメラルドグリーンの瞳を見つめる。
彼は苦しそうに歪めた表情を和らげ、こくりと頷いた。

「もちろん。ルーエルが嫌だって言ったって、もう絶対に離さないんだから。」

そう言って悪戯に笑った彼に、私も自然と笑顔になる。

「私もよ。これからは、何があっても離れずにいようね。」

コツンとお互いの額を合わせ、笑い合う。
その行動に、4年前――私達が恋人になったあの日を思い出した。

「ねぇ、シャル。4年前のあの日も、こうして笑い合ったね。」
「・・・そうだね。俺達が、両思いになった日。」

そう言ってそっと私から離れるシャル。
シャルの纏う空気が変わったことに首を傾げながら、彼を見上げる。

「ルーエル・・・指輪、借りてもいい?」
「?うん、いいよ。」

唐突なシャルの言葉に戸惑いながらも左手中指に嵌められた指輪をそっと抜き、彼へと渡す。
彼は指輪を受け取ると、自分の指に嵌っている指輪も抜き取り、手の平に並べた。

色の違う宝石が埋められた、同じデザインの指輪。

片方は澄んだ空のように輝く蒼。
片方はオーロラのように輝くエメラルドグリーン。

それらを手の平に並べたまま、シャルは改めて私に向き合った。
真剣なその眼差しに私の背筋も自然と伸びる。

「ルーエルに、話さなきゃならないことがある。」

その言葉に、その声音に。
今から話すことがあの4年前の続きなのだと悟る。
私は全てを受け止める覚悟で、しっかりと彼の目を見て頷いた。
そんな私に、彼はその目に幾分か安堵の色を滲ませ、同じように頷く。
そして、4年前に話せなかったこと――おそらくは彼らの仕事のこと――を話し始めた。

「俺達は、蜘蛛――通称、幻影旅団。窃盗、殺人を活動の主とし、たまに慈善活動もする危険度Aクラスの賞金首。
それが、俺達の仕事だよ。」

幻影旅団についてとその活動内容はある程度知っている。
だけど、全てを知った上で...それでもシャルの口からその事実を聞きたかった。
私は無言でその先を促す。

「ルーエルは俺達の獲物ターゲットだった。だからあの日、俺達はあの城を訪れたんだ。
目的は君の『言霊』。詠使いの話を聞いた時、俺達はその能力は念によるものだと思っていたからね・・・。
だから、その能力を盗む・・為に君と接触した。」

初めて聞くその事実に驚き目を見開く。
自分の過去に興味が無かったということもあるが、私がいた城や国についての情報は調べたことがなかったから。

「じゃあ、国の人達を殺したのはシャル達?」

ただ事実確認をする為に投げかけた質問。
だけど、その質問にシャルは言葉を濁した。

「俺達、ではないかな。
俺達が来る前に別の盗賊が城を襲っていたみたいなんだ。
俺達が国に着いた時には・・・そう、生きてる人はいなかった・・・・・・・・・・・。」

その言葉の異様さに思わず息を呑む。

「それって...住民もって事よね?シャル達の前に来た盗賊達がやったの?」

この時、私はシャルの言葉の意味を正しく理解出来ていなかった。

生きてる人はいなかった・・・・・・・・・・・

何故こういう言い方をしたのか。
この言葉が指す本当の意味に気付いていたら、私はこの先で過ちを犯すことは無かったのかもしれない...。

私の疑問にシャルは曖昧に笑っただけだった。
その笑みの意味すら分からないままで―――。

「本当は城でルーエルの能力を盗んだら、ルーエルは置いて帰るつもりだったんだ。
だけど、君を見た団長が君に手を差し伸べた。本当に予想外だったよ。」

その時のことを思い出したのか、シャルがくすくすと笑う。
私もあの時のことはよく覚えている。
私に触れた手はとても大きくて暖かく、そして、とても優しかった。

「君を連れ帰った時、団長は言ってた。『こいつに世界を見せてやりたい』って。
それは俺達、旅団みんなの総意だった。
『寒い』って言葉すら知らない君に、その真っ白さに...曇りのないその笑顔に、俺達は惹かれたんだ。」

そう言って微笑んだシャルに少し照れくさくなる。

「そんな良いものじゃなかったわ。ただの物知らずなお馬鹿さんだったもの...。」
「はは、可愛らしかったけどね。でもルーエルは馬鹿ではないよ。ただ物事を教えてもらって来なかっただけ。
俺達が教えたことはどんどん吸収していったし、理解も早かったもん。」
「それはみんなの教え方が良かったからだよ。」

そう、みんなは私のどんな疑問にも一つ一つ丁寧に答えて教えてくれた。
それだけじゃない。私にとって彼らの背中を見ながら生活していくことは、何よりの成長と自我の確立に繋がったのだ。

「同じくらいの歳なのに、みんなはしっかりと自立して動いている。憧れだったわ。私も早くみんなみたいになりたいってずっと思ってた。」

肩を竦めて笑う。
そんな私に、シャルはどこか後ろめたそうに私から視線を外した。

「ルーエルに教えてきた事は、俺達の生き方とは真逆の事だった。いつかは言わなきゃって思ってたのに・・・。
ルーエルに拒絶されることを恐れて、俺達はずっと言えないでいたんだ。それが結果的にルーエルを傷付けることに繋がってしまった...。
4年前、ヒソカに聞いたんだろう?俺達が幻影旅団だと――人殺し、なんだと。」

その問いに私は頷くことで肯定する。
だけど、シャルが考えたであろうことは否定した。

「確かにヒソカから聞いた時は驚いた。だけどね、不思議と嫌だ、とか、怖い、とは思わなかったの。
浮かんだのは、目が見えるようになったあの日・・・初めて見た、みんなの優しい笑顔だったわ。
私にとってはどっちだって良かったの。みんなが悪人でも善人でも、私にとってはかけがえのないたった一つの家族なんだもの。」

帰る場所は変わらないわ。

そう言って笑う。
そんな私にシャルは泣きそうに顔をくしゃりと歪めると、そっと私を抱き寄せ耳元で小さく『ありがとう』と囁いた。
少し声が震えていた彼に、私も彼の背へと手を回し『こちらこそ』と小さく返す。

やっと、4年前のあの日と繋がった気がした。

そしてシャルがそっと私から離れ、改めて向き直る。
真剣な眼差しで、彼は私に告げた。


「ルーエル、君が好きだ。こんな俺だけど、付き合って欲しい。」


トクン...と心臓が甘い音を立てる。

あぁ、そうか。
私達はまだこの言葉を交わしていなかったのね。

ドキドキと心臓がうるさい。
目の前のシャルがどうしようもなく格好良くて、大好きで、込み上げてくる気持ちの大きさに身体が爆発してしまいそう。

きゅっと手を握り、震えそうになる声に力をいれる。


「私も、シャルが大好きです。お付き合い、宜しくお願いします。」



4年前に言えなかった言葉を、今―――。



目の前のエメラルドグリーンは嬉しそうに細められ、口元が綻んでいく。
彼は『ありがとう』と小さく呟くと、手の平に乗せていた指輪――蒼い宝石のついた方――を持ち、私の左手を取った。

するりと指輪が通った指は、左手の薬指。

4年前より彼に近くなったその場所に、私は嬉しさに笑みを溢した。
左手薬指に嵌った指輪を胸の前できゅっと握り締め、幸せを噛みしめる。

そして、未だにシャルの手の平に残っているもう一つの指輪を手に取った。
緊張でぎこちない動きになってしまうが、私もシャルの左手を取り、ゆっくりとその薬指に指輪を通した。
シャルの顔が幸せそうに綻ぶ。

4年ぶりに触れた彼の手はとても大きくてゴツゴツしていた。
そのことに、改めて彼が“男”なのだと意識させられる。
今更だが、心臓がうるさく音を立て体中に熱が集まってきた。

「照れてる?」

からかうように聞いてきた彼に、むぅ..と頬を膨らます。

「だって...シャル、かっこいいんだもの。」

素直にそう言えば、今度はシャルが目を見開き真っ赤になった。
その姿が面白くて、思わず吹き出す。
今度はシャルが頬を膨らます番だった。

「ルーエル、不意打ちはズルいよ。」

そう言ったシャルは不意に膨らませた頬を戻し、ニヤリと悪戯に笑う。
そして私の耳元に口を寄せると、

「そんな可愛いこと言う人は、キスしちゃうよ。」

そう甘い声で囁いた。
その言葉に肩を跳ねさせると、シャルはクスリと笑って私の頬に軽くキスをする。
じわじわと顔に熱が集まり真っ赤になった私に満足そうに笑うと、シャルはぐっと伸びをして立ち上がった。

「ずっとこうしていたいけど、俺だけ独り占めはみんなが怒るからね。そろそろ移動しようか。」

そう言ったシャルに私は待ったをかける。

「シャルに紹介したい人がいるの。」

その言葉にシャルは不思議そうに首を傾げた。

「俺に?それって、俺が蜘蛛だって知ってる人?」
「えぇ、会えば絶対に分かるわ!」

ふふっと笑うと、シャルは首を傾げながらも分かったと頷いてくれた。
随分待たせちゃったなぁ...と、エレフを思いながら歩き出すと、不意に繋がれた手。
シャルのそんな行動に、思わずドキッと心臓が高鳴る。

隣にいるシャルを見上げれば、彼は幸せそうに笑っていて。
4年前より伸びた身長、逞しくなった身体。
そんな見慣れない部分に少し戸惑ってしまう。

私は背伸びをして彼の金色の髪に触れた。
くすぐったそうに目を細めた彼がなんだか可愛くて、思わず笑みが溢れる。


「あの頃よりも背が伸びたね。」

そう言えば、彼は愛おしそうに目を細め

「君の方こそ、綺麗になった。」

そう甘い声音で囁き、私の髪を撫でた。


辺りが夕闇に染まり出す中、再びお互いの手を取り歩き始める。
チラリとシャルを盗み見れば、彼も私を見ていて慌てて視線を逸らした。
彼がくすくすと隣で笑っていて、なんだか恥ずかしくて、甘酸っぱくて...

とても、幸せだった。






やっと、会えたね。

これから二人、何があっても離れずにいよう。







――繋いだ手に、どちらともなくきゅっと力をいれた。









「あ、そう言えば...。

 良い忘れてたんだけど、そのワンピースすごく似合ってる。
 とっても可愛いよ、ルーエル。」











        


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