魔女の住む島
「ここが、魔女の住む島…」
約一週間かけてやっと俺達は地図にあった島に辿り着いた。
真っ白な砂浜の向こうには森が広がっている。
「警戒を怠るな。行くぞ。」
魔女の住む島
団長を先頭に森の中に入っていく。
――ザワリ…
森に足を踏み入れた瞬間に感じた悪寒。
念とは違う嫌な感じが俺達を包む。
「嫌な雰囲気だぜ。よく分かんねぇもんに纏わり憑かれてる感じだ。」
フィンクスが殺気立ちながら辺りを見渡す。
マチも念を発動させ、辺りを警戒をしている。
瞬間――
「「「「――ッ!!?」」」」
周りの木々から無数の蔦が俺達に向かってきた。
俺は体を捻り蔓を避け、
団長はベンズナイフを、
フィンクスは素手で引き千切り、
マチは念糸で蔓を括り上げる。
「念、じゃないね、これ。」
「あぁ、オーラが全く見えない。どこから操ってるかも特定出来ないな。」
いくら薙ぎ払っても蔓が途絶える気配はない。
団長はスキルハンターを取り出し、あるページを開いた。
団長のオーラが跳ね上がると同時、オーラが円のように周りに広がった。
広がったオーラが蔦に触れた瞬間、蔦はザァァァアアッと一斉に引いていく。
「なるほど、念での攻撃は効くようだな。」
スキルハンターを閉じ、蔦が引いていった方を見つめる団長。
「何したの団長?」
聞くと、話は後だ蔦を追うぞ、とだけ言って走っていってしまった。
俺達は顔を見合わせ、とりあえず団長の後を追った。
* *
「ビンゴ。」
上を見上げながら呟く団長。
「団長、速いよ…って、こいつ誰?」
やっと追いついた俺達の目の前。
そこには蔓に縛られジタバタしている少年がいた。
「こいつが俺達を攻撃してきた奴だ。」
「さっきの団長の能力?」
「あぁ…。
《リペル(僕の痛みは君の痛み)》
自分に向けられた攻撃をそっくりそのまま相手に返す能力だ。
情けない程臆病な奴から盗んだ。」
蔓に縛られてる少年から目を離さず、淡々と説明をする団長。
その手には開かれたスキルハンター。
俺達に説明すると同時、それは少年への牽制でもあった。
俺達に攻撃しても無駄だ、と――。
「――くッ!お前ら!!何しに来たんだ!!!俺達を殺しに来たのか!!?」
未だにジタバタしながら、でも俺達を睨み叫ぶ少年。
緑色の髪を後ろで一つに括り、目は深緑色をしている。
年齢は俺よりもちょっと下ぐらいかな?
念じゃない力を使える、という点を除けば、体術もそんなに使えないみたいだし普通の子供だろう。
「違う。話を聞きに来ただけだ。
お前じゃ話にならないな。話の出来る大人はいるか?」
「話にならないってどういう意味だよ!!子供扱いすんなッッ!!
その前におーろーせぇぇぇぇ!!!!!!」
ジタバタジタバタジタバタジタバタ
「「「「……………」」」」
ジタバタジタバタジタバタジタバタ
「うぅぅぅぅーーーーーーーッッ」
「マチ」
「はぁ…。はいよ」
ナイフで蔓を斬ると同時、マチは念糸で少年の手を後ろで括り上げた。
「うお!?なんだよこの糸?ぅ、動かねぇェェエエエ!!!」
「煩い餓鬼だね。ちょっと黙ってな。」
「餓鬼じゃねぇー!俺は――ッ」
「エレフ!!!アンタ何やってんだぃ!?」
少年の声を遮り凛とした声が森に響く。
声の方に目を向けると、赤い髪を高い位置で括った気の強そうな女性が。
「母さん!?」
少年が驚く。
どうやら母親らしい。
「こいつら!森に侵入してきたんだ!!きっと俺等を殺す気だ!!!」
キッと団長を睨む少年。
女性は俺達を一瞥した後、ゆっくりとこちらに近付く。
俺達はスッと構えた。
女性は少年の前で足を止めると――。
「このバカ息子ッ!!
森に入ってきた奴を誰彼構わず襲うなっていつも言ってるだろう!?」
少年の頭に拳を振り下ろしながら言ったのだった。
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