その体温に罪はない



「っくっしゅん!!」
「うわっ大きいくしゃみ」

 堪忍なあと言うよそでずずっと鼻水を啜る音が混じる。

 時はメリークリスマス。
 高台から見える街はイルミネーションで彩られ、夜空を照らすそれらはこの学園都市をいっそう幻想的に魅せる。
 男女問わずきゃっきゃうふふなイブの中、もう一度志摩くんの大きなくしゃみが冷えた耳につく。

「あーくそっ。なんでこんな日まで任務なん? アホやろ。誰が得すんねん」
「まーまー。今年はまだいいほうだって綴たちが言ってたよ」
「そりゃあ長い最條先生たちにとったらマシかもしれへんけど、こっちは新卒(といっても中二級になったばかりの)一年のぺーぺーやで? いいも悪いもあるか!!」

 綴曰く、この時期は形だけとは言え積極的に賛美歌を歌ったりなんだのするおかげでそう大きな任務が下りてくることはない。
 しかしいつ何時敵襲に合うかわからないため、シフト制で警備に当たる。
 ご覧のとおりあたしと志摩くんは運悪く、いやただ巡回してるだけだから運良く平和なクリスマスイブを眺めてる。

「……それともあたしと一緒なのが嫌? もしかしてこの前情報管理部の先輩に声かけてたのかぶったりとか?」
「い、いやいやいやいや何言ってますの!? 確かに連絡先は交換したけど、予定はアッ」
「……」

 やっぱりそうだったか。

「か、堪忍なあ……べ、別に奏ちゃんとの巡回が嫌とかそういうわけじゃなくって」
「わかってるよ。男の性(さが)なんでしょ? 何年の付き合いだと思ってるの?」

 わかってる。でも許さない。

「あだだだだだだだだあ痛い痛いですぅ!!」

 引っ張った頬は冬の夜風に晒されてひどく冷たい。

「あ、あの、奏ちゃん……?」
「……せっかく久しぶりに志摩くんと同じ任務につけたのに浮かれてた自分が馬鹿みたいじゃん」

 任務とは言え、好きな人とイブを過ごせるのに。楽しみにしていたのが恥ずかしい。耳が熱くなるのがわかる。
 かと思えばぎゅっと後ろから抱きしめられた。

「ごめん!! ほんますんませんでした!!」

 背中からぎゅうぎゅうと力強く抱きしめてくる志摩くんの体温にどうしても絆されてしまう。

「……ばかっ」

 簡単に許すあたしも大概馬鹿だ!

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