「もうすぐだ!もうすぐそこ!脱出ゲート!なんか無駄にかわいいけど、2人であれをくぐればクリアだ!」
ゲート前から最初の衝撃波を撃ち込んだのだろう。
建物や道路の舗装が壊れており、思わず爆豪は圧倒的強さに顔をしかめた。
「…ッザケやがって」
「オールマイト、追ってくる様子ないね……。梓ちゃんが止めてくれてるみたいだ。雷の音が凄いし」
「てめェ散々倒せるわけねえっつっといて何言ってんだアホが。梓で止めきれるわけねえだろクソ。あいつはそれも承知の上で時間稼ぎしてんだよ」
「…かっちゃん、そういえば、雷の音、」
「あ?背後気にしてる暇あったら足動かせ!次もし追いつかれたら、今度は俺の籠手で吹っ飛ばす」
「うんうん、それでそれで!?」
間に現れたオールマイトに2人はゾッとした。
梓が突破された。雷の音が聞こえなくなって少ししか経っていないのに。
右手の籠手を向けるが粉砕され、
「これでも重りのせいで全然トップギアじゃないんだぜ?さァ、くたばれヒーローども!!」
そこからは一瞬だった。
何が起こったのかわからないうちに完封された。
轟・八百万チームの条件達成を告げるアナウンスが聞こえる。
「驚いた…相澤くんがやられたとは!ウカウカしてらんないな……よし、埋めるか!」
右足で踏まれる爆豪と、手を掴まれ宙ぶらりんの緑谷。
「っそ…!」
「なんて顔だよ少年…」
抵抗する緑谷を地面に投げる。
「ぎゃっ」
「最大火力で私を引き離し、東堂少女を足止めに使い、2人で脱出ゲートをくぐる。これが君たちの答えだったようだが、東堂少女はダウンし最大火力も消えた。終わりだ!!」
「うるせぇ…」
圧倒的力の差を見せつけられ踏まれている状況でも爆豪は諦めていなかった。
ードォンッ!!
上に向けて大きな爆破をすると、オールマイトが爆風で浮き上がる。
「ブッ飛ばす」
「え!?」
「スッキリしねぇが、今の実力差じゃまだこんな勝ち方しかねえ」
「ちょ、待、まさか」
今しかない。側で転がる緑谷を掴むと、ソフトボール投げよろしく爆風とともにぶん投げた。
「死ね!!」
「っ…!痛」
めちゃくちゃなやり方だが、これしかない。
緑谷は空中で体勢を立て直すとゲートを見据えた。
が、空中で身動きの取れないはずのオールマイトが拳の風圧で上から緑谷の腰に突撃する。
ードガッ
「チッ、」
「いやいや甘いぞヒーロー共!」
その衝撃に緑谷は地面を転がった。
咄嗟に爆豪はオールマイトにむかって地面を蹴った。
「籠手は最大火力をノーリスクで撃つためだ。バカだったぜ…リスクもとらずにあんたに勝てるはずなかったわ。行けデク!!」
ードガァァァンッ!
本日二度目の最大火力がオールマイトを襲う。
「うわっ」
「早よしろ!ニワカ仕込みのてめェよか俺のがまだ立ち回れんだ!梓と、俺の役に立てクソカス!」
(さっきので腰が…!こんくらいの距離なら、、走れ!そうだ、よりゴールに近い僕をオールマイトは無視できない!かっちゃんならそこを!)
が、緑谷がゴールに着くよりも早く、爆豪がオールマイトによって地面に叩きつけられた。
「寝てな、爆豪少年。東堂少女もだったが、そういう身を滅ぼすやり方は悪いが私的に少しトラウマもんでね。った!?」
自分を掴むオールマイトの腕を爆破しながら掴む爆豪の目は必死だった。
「早よ行けや、クソナード…!折れて、折れて、自分捻じ曲げてでも選んだ勝ち方で、それすら敵わねえなんて…嫌だ…!!」
そして緑谷が全身に力を入れたその瞬間、
オールマイトに雷が落ちた。
ードガァンッ!!
頭上には何故か細長いプラスチック板に乗った梓がいた。
「落雷、!?東堂少女!?タフだな!」
『いずっくん、ぶちかませ…!!』
「っ、うん!どいて下さい、オールマイト!!」
ドガッ!と緑谷の渾身の拳がオールマイトの頬に炸裂する。
ふらついている内に爆豪を抱え、走り出そうとした時、
『飛べ!!』
信頼している子の声だからこそ、何も考えずに飛んだ。
途端、風で浮かせたプラスチック板に乗った彼女が疾風とともに後ろから緑谷の手を掴みぐいっと引っ張る。
とんでもない暴風が吹き荒れたと思ったらそのプラスチック板で風にのり、一瞬でゲートをくぐった。
『も、むり』
くぐった瞬間、風が止む。
プラスチック板は風力を失い、板の上の梓達はズザザッと地面に転がった。
「梓ちゃん!かっちゃん!」
2人とも気を失っていた。
(この3人は本当に、壁を前にしてよく笑う)
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