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期末テストの筆記試験は無事終わり、演習試験当日。


「それじゃあ演習試験を始めていく。この試験でも勿論赤点はある。林間合宿に行きたきゃみっともねえヘマはするなよ」


勢揃いした教師陣を前に耳郎は首を傾げた。


「先生多いな……?」

「8人?梓ちゃん、なんかロボ相手っぽくなくない?」

『ああ、なんか去年まではロボ相手だったんだっけ?たしかに、透ちゃんの言う通り、』

「諸君なら事前情報仕入れて何するか薄々わかってるとは思うが、」

「入試みてえなロボ無双だろ!」

「花火ー!カレー!肝試しー!!」

「残念!諸事情あって今回から内容変更しちゃうのさ!」


ぴょんっと相澤の捕縛布から現れた根津に一同ざわめいた。


「校長先生!?」

「内容変更って…」

「それはね、これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ!というわけで諸君にはこれから…チームアップでここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」

「先生方と…!?」

「なお、チームと対戦する教師はすでに決定済み。動きの傾向や、成績、親密度、諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表するぞ!」


大事な演習試験なだけに緊張が走る。
梓と組めればなぁー、と隣に立つ彼女を見れば自分と同じようにじーっと梓を見ている轟がいて、こいつも組みたいのかと思わず吹き出してしまう。


『どした、耳郎ちゃん』

「え?いや、梓と組みたいなと思ってさ」

『お!私も!組も!』

「あんた先生の話聞いてた?」


独断で先生たちがチーム決めてるの。
あ、なんかそんなこと言ってたね。
緊張感ないな、と苦笑したところでチーム発表が始まる。


「まずは轟と、八百万がチームで、俺とだ。そして、」


ニヤリと口角を上げる相澤の発表に推薦同士かよ、ざわめく。が、次のチームの発表に場は騒然とした。


「緑谷と、爆豪、東堂がチーム」

「デ…っ」

「かっ…」

『わあ!』

「ここで幼馴染トリオきたぁ!?」

「嬉しそうなの東堂だけじゃん!つーか波乱しか感じないよ!」

「で、相手は…」

「私がする!!」


なにかとクラスを騒がせる幼馴染トリオ。
爆豪は緑谷を睨み、緑谷は顔を背け、東堂は手を叩いて喜んでいる。
ちぐはぐ凸凹トリオに芦戸の言う通り波乱しか感じないと峰田ですら顔をひきつらせる。
しかも相手がオールマイトときた。


「協力して、勝ちに来いよ、三人とも!」

『はい!』

「返事してんの梓ちゃんだけ。マジウケル」


その後他のチーム発表もあり、それぞれの対戦相手も決まった。


『耳郎ちゃん、口田くんと?』

「うん、相手はマイク先生。ヤバイよね?鼓膜破られそう」

『うわぁ、音にまつわる個性同士か。わかりやすい組み合わせだけど、天敵だね』

「うん、まぁ、あんたよりはマシだわ。3人でオールマイトってやばいっしょ」

「そうですわ。ただでさえ、あのお二人は仲がよろしくないのに」

『うーん…だよねぇ。でも、協力しなきゃ勝てる相手じゃないからなぁ。百ちゃんの相手もしんどそうだね』

「え、えぇ…相澤先生は強敵ですわ。…轟さんの邪魔にならないようにしませんと」


少し青い表情でそう言った八百万に耳郎は心配そうに眉を下げた。彼女の家で勉強会をした時にも思ったが、おそらく今実技において自信を喪失している。

それもそうだ。推薦合格だが、体育祭でも結果を残せず指名も多くなく、授業においても最近はあまり目立った活躍を見せていない。


(ヤオモモより目立ってないウチにはなんのアドバイスも出来ないけど…大丈夫かな)


心配する耳郎に対して梓はあっけらかんと笑っていた。


『轟くんの邪魔になるわけないよ!』

「え?」

『轟くんと共闘した時に思ったんだけど、私も轟くんもガチンコ勝負しかできなかったから、ヒーロー殺し相手にね、うまく逃げられなかった』

「…」

『百ちゃんの頭の良さは武器だから、轟くんをきっと助けるよ!』

「梓…あんたって子は、…ヤオモモ、ウチもそう思う!一緒に頑張って、林間合宿に行こう!」

「梓さん…響香さん、」


感動したように目元をうるうるとさせる。
八百万の重荷を一瞬で払ってしまう梓に耳郎は、本心で言ってるってわかるから、どストレートに心に来るんだよな、としみじみ思うのだった。


(よっし、いくぞ!かっちゃん!いずっくん!私たちのチームワークでオールマイトを倒すぞ!)

(やめろ引っ張んなクソチビが!)

(梓ちゃん、ぼ、僕らじゃ無理だって!)

(勇者、梓)

(やめて葉隠、クソウケる)





〈次に緑谷と爆豪、そして、東堂ですが…オールマイトさん、頼みます。緑谷と爆豪に関しては能力や成績で組んでいません…偏に、仲の悪さ!!そして、東堂は…この2人を唯一懐柔できますが、自分より強い相手との戦闘に置いて、1人で身を削り過ぎる傾向があります〉

〈ほう…〉

〈彼女のは共闘よりは単独での戦闘スタイル。絶対的強さを前にして、2人の仲をフォローしつつ共闘できるかが鍵です〉


バスで喋るのは梓だけ。
こりゃなかなか難しいテストになりそうだ。
オールマイトはバスを運転しながら、このチームアップを考えた相澤の言葉を思い出していた。

バスをとめ、試験会場にて3人に向かい合う。


「さて、ここが我々の戦うステージだ」

「あの…戦いって、まさかオールマイトを倒すとかじゃないですよね?どうあがいてもムリだし…!」

「消極的なせっかちさんめ!ちゃんと今から説明する」


オールマイトの説明はこうだ。

制限時間は30分。
合格するには、ハンドカフスをオールマイトに掛けるか、3人のうち2人がステージ脱出すること。


『会敵して勝てるんなら勝ち、勝てそうにないなら撤退して応援呼ぶべきってことですか?』

「そう!君らの判断が試される!けど、こんなルール、逃げの一択じゃね?って思っちゃいますよね。そこで私達サポート科にこんなの作ってもらいました!超圧縮おーもーりー!」

『わぁ!』

「体重の約半分の重力を装着する!ハンデってやつさ。古典だが、動きづらいし体力は削られる!あ、ヤバ、思ったより重…」

『半分て。すごく大きなハンデですね!』

「ちなみにデザインはコンペで発目少女のが採用されたぞ」

「戦闘を視野に入れさせるためか。なめてんな」

「HAHA!どうかな。試験の説明は以上だ!質問は?」

『はい!質問です!真剣使ってもいいですか!』

「もちろんオーケーだ。よし、他に質問がなければ、スタート位置につこう」


そして、林間合宿を賭けた期末試験が始まった。


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