創作Short | ナノ


▽ @





うるさい蛙は、水に沈めるにかぎる。

思い立ったから人差し指と親指でつまみあげてみた。ゲロゲロと煩わしかった蛙が、ゲコゲコと言いはじめる。これはこれでうるさいかもしれない。早く洗面所へ連れていこう。
……待てよ。水道で水を溜めるより、風呂場でお湯をはる方が早いんじゃないか? 
水の量が全然違うだろうし、うん。それがいい。だったら行き先は風呂場に変更だ。

蛙は人語を理解しているのかいないのか、相変わらずゲコゲコ節を披露している。暢気で馬鹿っぽいな……これから沈められるというのに。

「うるさいッスよ」

―――ゲコゲコぴょんぴょん。
しくじった、余計にうるさくなった。ずっと俺が無視してたせいか、蛙に話しかけた途端に蛙が喜んじゃってなんだか面倒。
やっぱり蛙なんか助けるんじゃなかった。
「はぁ……めんど」
恩返しなんて要らないんだから、いつも通り無視をすれば良かったものを。回り道をする方が面倒だと思って、道を塞ぐ小学生から蛙を助けてしまったから大変だ。変になつかれてそのままお持ち帰りする羽目になったのだから、慣れないことはするもんじゃないな。


風呂場は階段を下りた左手にある。
比較的俺の部屋から近いからありがたい。家族にバレると厄介だから慎重に、それでいて早足で風呂場に向かおうとした。








 の里帰り






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