▼ 07
連れられた修兵の部屋で、私は修兵を仰ぎ見て居た。
阿近さんとの遣り取りを聴いて居た筈なのに、組み敷いて私を囚える修兵は自重で私を抑え込む。絶対に逃す気は無いんだと言うように込められる力が、私には余計に辛かった。
「ごめんね、修兵」
「っ……」
幾ら命令だったとは言え、やっぱり私はこんな事を引き受けるべきじゃなかった。
「もっと早く、違うんだって言ってあげるべきだった」
無いものは無い。
其の方がずっと優しい……。
「私はもう、檜佐木副隊長の彼女じゃ有りません」
そう告げて、瞠目する修兵に、もう一度「申し訳有りません」と口にして目を伏せた。
「苦言は総隊長他、各隊長にお願いします。と言いたい所ですが……」
「敬語止めろ」
「……もう、馴れ馴れしく会話して良い関係では、無いので……」
「止めろっつってんだろっ!!!」
「…………っ」
バンッ と弾け飛んだ霊圧が、まるで責めるようにビリビリを肌を刺す。
「お前はもう、好き……じゃねぇのかよ……」
離すまいとする修兵の腕の中、キツくキツく抱き締められて息が苦しかった。
好きなんだと、何度も繰り返しては私を掻き抱く修兵が、どうして……と茫然と呟く。
其れでも、私には此れ以上どうしてあげる事も出来なくて……
「大丈夫だよ……」
「大丈夫な訳、無ぇだろっ!」
募る修兵を抱き締めるだけ。
でも、大丈夫だから……。
「此れから修兵はちゃん思い出す……」
私達は終わっているんだと。
修兵の中に、私はもう居ないんだと……。
「…………ねぇよ」
「え……?」
「そんなの、知らねぇって言ったんだよ」
「修兵っ?っ、ぃ、や……、…………っ」
ずっと――…
「――…、っ……」
抑えてくれていたはずの劣情を、修兵が私に叩き込む。
「―――…っっ」
其の熱だけを残して、君はまた消えて行くのに……。
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