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………修兵?


だよねと。

間違えようのない霊圧に、厭だ、どうしてと私の頭は混乱を極めて行った。


修兵が此処に居る理由が解らない。
私の名を呼ぶ理由も、躊躇いがちに伸ばされる手も……。

目を逸らす事も出来ずに、ジリッ と距離を取れば、途端に歯を喰い縛っては歪ませる其の表情の意味さえも、今は、私には辛いだけ。


「紗也……」


繰り返される名前を何かが拒絶する。

冷たい頬を温かな熱が伝って、私は泣いているのだと知った。


「……速ぇっすね」

「っ……」


そんな私の張り詰めた緊張を破るように逸速く反応したのは阿散井副隊長で、何処か暢気な口調とは裏腹に、然と容易に解る程に怒気を含んだ霊圧に躯が跳ねた。



速ぇっすね、



其の言葉が示す通り、修兵を此処へ呼んだのは阿散井副隊長なんだろう。
傍らの人を仰ぎ見れば、互いに逸らされない視線が交わって居て、其れは睨み合うに近いように思えた。


何故、と触れれば柔らかな視線が私を捉える。

大丈夫だと言うように頭を撫でる手が頬を辿って、先に触れた首筋を準えた。


「っ……」

「阿散井っ……」


其の掌が死覇装の内に侵入し、胸元へと降りるのにまた同様の反応を返す私に苦笑して、ゆっくりとした所作で離れさせた。


「阿散井副隊……」

「紗也。此の大莫迦野郎の話を聞いてやれ」

「っ…………」

「此の人は、」


ふぅ と呆れた溜め息を吐きながら、「お前が好き過ぎて何も見えなくなってただけだから」と浮かべていた苦笑の色を強めると、後退る私を簡単に捕まえて修兵の元へと歩を進めた。


「厭っ……」

「お前も、自分で解ってんだろ」


檜佐木さんじゃなきゃダメだ、って……。


「鳥肌立ててんじゃねぇよ」


そう言って口角を上げた阿散井副隊長が、また私の耳に口唇を寄せて……


『紗也に、似てたんだとよ。俺はそうは思わねぇけどな』


だからもう一度だけ、話を聞いてやれと囁くように云った。







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