Christmas ROSE
「セクハラの激しい俺様でイケメンの親戚の兄ちゃんをギャフンと言わせる方法?」
「だからギャフンは死語……」
「ちょっ、何歳っ?紹介してっ」
「話を聴こうよって、まぁ良いや。確か………180歳くらい?」
「冗談はいいっ」
「いや冗談じゃない……けどそれも良いや。残念ながら彼女も居る」
「チ……だよねぇ」
とまぁノリノリの友人にお約束のような一応の手順は踏んでやって、だから何か無いかと真剣に訊いた。
毎度毎度、私を完全にペットか玩具か何かだと思っているらしいあの人は、
「そんな良い男に可愛がられてるなんて羨ましい」
「…………」
と言う捉え方も無い訳ではないけれど……。
何かと言っては直ぐに怒り出し……いや、機嫌が好くても大差は無い。
私を腕に捕らえて拘束しては、セクハラ行為を繰り返す。
「可愛い妹だとでも思ってるんだから良いんじゃないのー?」
「……妹にキ…はしないだろう」
「キ?」
「いや、何でも無い」
本当、この際ペットでも玩具でも妹でも何でも良いからっ
「撃退法を教えて下さい」
このままじゃ私の身が持たない。
もう切実にと懇願した。
『先手必勝!』
アンタも其の親戚のお兄ちゃんが嫌いじゃないなら、遣られる前に同じ事を遣り返してみたら?って、ちょっと待て。
『キスをっ?』
『は?キス?』
『いやだから何でも無いですホント失言でしたすみません』
先に遣っちゃえば遣りようも無いし、遣られる方の気持ちも解るかもよ?とは言うものの……。
私が?あの人に……っ?
『無……』
『なら諦めて遣られてろ』
『………それも嫌だ』
と、無駄に回想なんかしちゃっているのはまるで落ち着かないからで。
「っ、どうした?」
らしく無く慌ててらっしゃるこの人の気持ちも良く解る。
襖を開けたら神妙な顔付きの私が、正座で待ち構えたりなんかして居るんだから、そりゃ驚いた事だろう……。
「でも緊張して……」
「は?」
「いえ何でも有りません」
もう、どこまでが心の声かも判らなくなって来た。
今日は此方に来るとこの人が言っていたから、今か今かと待っていたら緊張してしまった。
やる、と決めたは良いものの、いざとなると緊張して口から心臓が飛び出してしまいそうだ……。
「お前、本当どうした……」
口数も少ない。緊張で顔も強張って、もしかしたら顔色までが悪いかも知れない私を、心配そうにこの人が覗き込む。
その距離が近過ぎて、何かがおかしくなりそうで……
「…………ぃ」
「は?」
聴こえねぇよって、だから近いんですってばっ
顔を近付けるの止めて下さい!
そう言いたいのに、喉が貼り付いたように動かない。
本当ダメだ。
このままじゃいつもと何も変わらない。
いつものようにこの人に遊ばれて終わるだけ……
「あ、のっ……ですね」
「お前、ちょっと落ち着け」
「あの、だからっ……」
「だからどう、し……………………」
「あのよ……」
「………………」
「一つ良いか?」
と、言われても……。
良くないです。
だからこの人の言いたい事は良く解る。
だけど、すみませんが出来ればもう少しだけ待って欲しい。
「だから、お前……」
「っ……」
自分でやっといて照れんなよ……
今はそう言われたって、どうにもならないんだからしょうがないじゃないですかと声にならない声で抗議した。
そんな復活の難しい私に、呆れたようでは無いけれど、
「本当、お前……」
頼むから……
は――… と溜め息を吐いたこの人が、口元を覆い隠していた腕を外して引き寄せるから、これ以上の接触は今は無理だともがいてみる。
のに……
「待っ……」
てと、逃げる私を簡単に抑え込む。
「次やったら……」
「っ……」
止まる自信無ぇぞ……
そんな良く解らない事を口にして……、
「何が?って顔すんな、マジで襲うぞこの野郎」
「もうしません!」
「それも困る」
「どっちっ!?」
抱き込む腕に力を込めた。