「ツンデレ携帯」








遊「クロウ、マナーモードを解除して良いぞ」


ク「了解。……黙っとくってのもキツイなー」


遊「携帯でもそんなこと言うのか?不思議な感じだな」


ク「携帯って言っても、人間型携帯だからな。感情は人間そのものだ」


遊「悪いな、マナーモードは辛いだろ?」


ク「俺の機能の一つなんだから、いちいち謝るなって。それよりも、留守電着てるぞ」


遊「留守電?」


ク「再生します。『もしもし、アキです。ちょっと用があって電話しました。また掛け直すわね』一件目はアキからだな」


遊「次は?」


ク「再生します。『遊星、突然の電話ごめんね!探していた部品見つけたよ!』龍可からだ」


遊「そうか、部品見つかったか。それで、次は?」


ク「再生します。………諸事情により、留守電を削除しました」


遊「え、おい!?」


ク「削除しました」


遊「ちょっと待ってくれ、相手の名前だけでも…!」


ク「ま……くとか言う奴」


遊「あぁ、満足鬼柳か」


ク「よく分かったな。分かってしまうお前も酷いな」


遊「他に留守電は?」


ク「もうねーよ。後、メール着てる」


遊「メールもか?誰からだ」


ク「多分、ジャック」


遊「……多分?」


ク「既にブラックリストに入ってるから、宛名が表示されてねぇ」


遊「最近の携帯は、持ち主の許可無しにブラックリストに登録するんだな」


ク「何でだろうな」


遊「不思議だな。説明書見ても、そんな機能は全く無いのにな」


ク「………」


遊「目を反らすなクロウ。……仕方ない、掛け直すか。電話モードに切り替えてくれ」


ク「………」


遊「何でそんなに嫌そうな顔なんだ」


ク「いやぁ?別にぃ?まずは誰から掛けるんだ?」


遊「まずはジャックだな。早く掛けないと後が面倒だ」


ク「了解。――着信モードに入ります――着信をキャッチしました――


  『遅いぞ遊星!!俺が連絡してからもう30分も掛かっている!!』


遊「仕方ないだろう、今まで立てこんでたんだ。それに30分ぐらい我慢しろ」


ク『30分ぐらいだと!?その30分が大きいんだ!!俺を30分も待たせるのは貴様ぐらいだぞ、遊星!!』


遊「……ジャック、ちょっと落ち着いてくれないか」


ク『落ち着いていられるか!!』


遊「頼む、落ち着いてくれ。なんかクロウに怒られてる気がして辛い」


ク「通話を切りました」


遊「え!?」


ク「なんか腹立つから切った。あいつの電話五月蠅くて仕方ねぇ」


遊「まだ…本題に移ってなかったんだが…」


ク「次。次掛けようぜ」


遊「……ジャックにはメールで良いか。じゃあ、鬼柳に連絡を入れよう」


ク「――着信モードに入ります――着信をキャッチしました――


  『待ってたぜ、遊星!用は終わったのか?』


遊「あぁ、大丈夫だ。それより、何か用か?」


ク『ちょっと三日前ぐらいからデュエルディスクの調子が悪くてさ、メンテナンスして欲しいんだ』


遊「分かった、時間が空いたらそっちへ行こう」


ク『本当か?助かるぜ遊星!メンテ終わったらデュエルしようぜ!』


遊「良いぞ。こっちもデッキを調整しておこう」


ク『そうこなくちゃな!久々のデュエルで満足するしかねぇぜ!』


遊「……ふっ…く……っ」


ク『遊星?どうしたんだ?何でイキナリ吹き出したんだ?』


遊「い…いやっ…、何か…、クロウが“満足”って言った気分になって…っふっくくくっ」


ク「通話を切りました」


遊「あ」


ク「……そのウケ方、すっげぇ腹立つ」


遊「わ、悪い…っ余りにもシュールで……っ、フフフッ…」


ク「笑うな笑うな――ッ!!目覚まし狂わせるぞ目覚ましを!!」


遊「だって……っ駄目だっ、笑いが込み上げて…っ」


ク「……お前、もう電話禁止な。ていうか、ジャックと鬼柳の二人と連絡取るの禁止な」


遊「それは流石に横暴……っ」


ク「俺の人権はどうなる!?」


遊「お前は人じゃなくて携帯だから…人権じゃなく機権ってとこじゃないか…?」


ク「そういうことは聞いてねぇよ」


遊「真面目に答えてしまった、すまない」


ク「もう、連絡手段用の携帯を別に買え。俺は目覚まし機能しか使わねぇ」


遊「それは最早、携帯じゃなくて目覚まし時計……」


ク「だから別のを買え」


遊「………はぁ、仕方ない。別のを一台買うか…。クロウは目覚まし機能だけ使わせて貰うよ…」


ク「それで良いんだ、それで」


遊「……良い携帯をネットで探すか」


ク「これで楽になるぜー。……いや、待てよ…目覚まし機能のみ?……てことはつまり…」


遊「(お、このブルーノ携帯良いな…高性能だ…)」


ク「ちょっと待て。ストップ」


遊「ん?何だ?」


ク「やっぱ良い。買うな。他のは買うな」


遊「は?どうしたんだ一体。目覚まし機能だけしか使わせないんじゃなかったのか?」


ク「俺との会話量がかなり減るから駄目だ。買うの禁止」


遊「(これがツンデレってやつか?)……我が儘な携帯だ」


ク「我が儘で結構。とにかく買うな、良いな!」


遊「はいはい、分かったよ」


ク「それなら良い。充電してくる」


遊「(素直じゃない携帯だな)」

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