「舞い上がるのは最初だけ」
それは、突然起こった出来事でした。
『舞い上がるのは最初だけ』
「俺、二年の遊城十代って言います!突然ですが、俺と付き合ってください!」
「………え?」
高校に入学して間もなく、早くも告白という恋愛イベントに遭遇してしまった。
しかも相手は二年。更にはイケメンときた。俺は何かの運でも使い果たしたのだろうかと思ってしまう。
正直、恋愛経験は皆無だった。
告白されても、どう返事をしていいか分からない。が、相手の真剣な顔つきに、俺は無意識に呟いた。
「……俺なんかで…良ければ…」
そう言うと、十代と名乗った先輩は、嬉しそうに微笑んだ。
その微笑みに、一発で落とされたのかもしれない。
「彼氏が出来た」
幼馴染たちにそう言うと、全員一斉に吹き出した。
「はっ!?彼氏ってお前が!?」
「恋愛経験皆無で男よりも男前なお前が!?」
なんて酷い言われようだ。事実だが少しむっとする。
「でもまあ…おめでとう?で良いのか?お前に告白したってどこの誰だよ」
「二年の遊城十代って人だ。……でもなんか聞き覚えのあるような…」
ガターンッ
「はぁ!?遊城十代ってお前…あの遊城十代?!」
「正気かお前!?」
クロウとジャックが一斉に立ち上がった。
そうだ、思い出した。
遊城十代という上級生は……
「遊星ー!!」
「十代…さん…っ」
今、自分が着ている制服と同じものを、自分よりも着こなしてきたこの人。
「遊星!さっきは有難うなー!」
強い力で抱きしめられるが、柔らかい感触はない。
そうだ、この人はそうだった。
ただの女装癖な人だった。
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