少し外れにごつごつした岩穴があり、青い毛並みの彼女はその中へと入っていく。
中からの冷気が漏れて入口付近は涼しい。更に奥へ奥へと進んでゆくと中の構造は鍾乳洞であり、天井からは鋭く尖った岩を伝って水が滴っていた。






「ねぇ?あなたのいた組織のモンスターさん達がね、あなたに宜しくって言ってたわよ?」



「………」




「ふん、えらく余裕ね?かわいそうに、犯人扱いされて疑われちゃってるのにね」
「…元々の犯人はアンタなんだけど、ね」
「上に立つ者は真実を上手く変えることが出来るのよ」
「…アンタ、俺を嵌めたな」
「なんとでも」


彼女は妖艶に微笑む。しかし彼はそんな歪んだ彼女を見ている余裕は全くなく、ただじっと無言で睨んでいた。


「私ね、…どうしようもなく、傷付けたい人がいるのよ。」


はぁ、と溜息をついてからクスクス笑う彼女は「誰だと思う?」と双眸を細めた。


「……」



彼女は王に対する執着でいっぱいのようだ。この矛盾純正感情は度が過ぎている。歪んだ彼女の愛情が今、自分の身に起きていることの証明。
さらに自分が拘束されている周りに散らばる無数の骨が今まで彼女が気に入ってきた者達の亡きがらだってことが証明になる。
彼女は遠目をして「テオは私の事なんか見てくれない」と双眸を細めた。


「ティガレックスのくせに、その黒い姿なんて珍し過ぎるんですもの。
私を見て下さる?そしてアイシテ」


「………」

空回りする想いを切なく他のモンスターにぶつける。
無理だろう、心の中で呟いた。彼女は好いたものをこの岩穴の中にコレクションとして貯めている。王は妃のしている詳細は把握していない。妃からはハンターの持っていた道具を盗って遊んでいる程度としか伝えられているらしく、実際のこの状態がわからない。全く、のんきな王様だ…。王を責める理由はないのだけれども何となくどうしようも出来ない不自由さと理不尽さに腹が立つ…、というより問題は妃だ。彼女はこの地の支配権を存分に使っていた。
最近この火山でモンスターの消息不明の事件の源は彼女の趣味のせいだった。
自分は亜種グラビモス側の近衛部隊に新人として加った。その中で他の組織の奴らと消息不明のモンスターを偵察していたが、度々、タイミングよく己の周りで起こっていたために俺は他モンスター達からお前がやったんだろう、と濡れ衣を着せられているワケだ。誤解を解きたいのだが、しかしこの状態では何もできないし、例え逃げれる事ができたとしても、他モンスターが俺の言う事を信じてくれるとは限らない。
つまり、どっちもどっちで俺にとっては最悪。
俺がもし、ここで骨になってまた新たな奴がここに放り込まれたなら話は別かもしれないが。



「クスクス…黒きティガレックスよ。私を見なさいな」


「ぜってぇ、嫌だ。」


「照れ屋さんなのね、可愛い」


なんかもう、この状況が苦しくてしんどかった。だんだん腹立ってきて殺気が芽生えてきた。
…お妃さんよ、アンタは王様と一緒にワンワン尻尾振ってじゃれてばいいのに。


「ふん、あなたが私を倒せるとでも?おもしろいわね」




彼女は見透かしたように言葉を言う。
「妃たる者、下の立場となるおまえ達の考える愚かな考えなどわからないでどうする?」



確かに。
でも、もう俺は疲れた。
「…もう、アンタのその矛盾純正感情、命の灯と一緒にへし折ってしまおうか?」
「やれるものならね」


「俺ね、短気なんだよー…っ!」

「…!?」


刹那、怒涛の咆哮を上げた。俺は拘束しているものを力ずくで解きナナ・テスカトルに爪を振り上げた。


「……うぅっ!」


ナナ・テスカトルはぶっ飛び、岩肌にぶつかった。
よろ…、と立ち上がると歯を剥き出しにし唸った。


「…おのれ貴様、私に刃向かう気か…」


「どけえぇぇー!」


彼はナナを気にする余裕もなく、猛威前進で突進してきた。ナナは狭い洞窟の中だった為避け切れず突進をくらった。


「……なっ…!?」


今まで一般に知られてきたティガレックスとは似て比なる圧倒的な力の前に岩は砕け、新たな穴を作って黒いティガレックスは外へ飛び出していった。



「おのれ…、新参者ごと…きに…」


がくっ、とナナはその場で気絶し後に亜種グラビモスの近衛部隊に発見された。




ーーーーーーー
ーーーーーー
…………
その後、王は怒り、亜種グラビモスの近衛部隊に命じた。黒いティガレックスを「追放せよ」と。
逃げた黒いティガレックスは追い詰められた揚句、崖の底へと落ちていった…。




しかし、黒いティガレックスが崖から落ちて消えた後もモンスターが消息不明となる事件は終わらなかった。しかしそれは、亜種グラビモス近衛部隊とナナ・テスカトルとの間で真実を隠されてしまった。



事件の被害者と加害者はいかにして逆転したか




「…隊長が鈍いからすよ」
「……すまん…。」


何があったのか、何も聞かされてないグラビモス達は裏が絶対あると感じていた。







はい、わけわかんない上に目茶苦茶漠然と過ぎた話しになっちゃったー;;

題目素材元:オレンジと月涙

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