長編あなたへ | ナノ




01




4月の桜満開の春。

今日から高校生なんだ、と胸を張り校門をくぐる。
とてもワクワクして楽しくて嬉しくてついつい顔が緩む。

「ふふふ…」

にやついた顔でクラス表を見るのだが、ついこの間ここに引越してきたばっかりの私は、友達なんかいるはずもなく。
何故ここに来たのかは、まぁ色々あったわけで。
自分のクラスを確認し、即座に人まみれのその場から立ち去る。

人ってのはやっぱり苦手だな。暑苦しいしね。
あと、この年代となるとみんなが若く見える。歳かなぁ…?同い年なんだけど。

教室の一番後ろの窓側というベストポジションな席に座り、開花したての桜を見続ける。
秒速5センチメートルで地面へと向かうその姿は儚くて、でも目が離せなくて、ずっとずっと見ていた。
ずっとずっと、昔の思い出を一つずつ引き出しながら…。



桜の舞い散る季節
(私は)(まだ)(あなたの存在に)(気づかなかった)









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