37「なぁ!なまえが帰ってくるの今日だよな?」 平助くんは登校途中、突然なまえさんの名前を口にした。 「うん、そうだよ」 そう。 今日はなまえさんがアメリカから帰ってくる日。 だが、まだ2月。 なまえさんは最短以下の異常な速さで卒業したらしい。 流石だと思います。 「だけど、帰ってくるの午後だろ?」 薫が言っている意味は、きっと沖田さんのこと。 今頃、空港に着いているのだろう。 「ほんっと、総司のなまえに対する激愛っぷりには恐れ入るな」 「藤堂、お前も似たようなもんだろ」 薫の言葉に、私も平助くんも驚きを隠せない。 まさか、薫がそんな事を言うなんて。 「だけど、俺はまだ許してないから」 あぁ、やっぱり。 ギロリと平助くんを睨みつける姿は、まるで蛇だ。 蛇と蛙の関係とはこのことだなって思う。 「あ…っと、ととにかくさ!これで一件落着だよな!」 「どーだか」 「え?」 私も一件落着だと思ったのに。 薫は何を言っているのだろう。 「なまえが沖田のことまだ好きだと限らないだろ」 「でも行く前はあんなに…っ」 「約1年半も離れてたし」 なまえさんに限ってそんなこと…。 でも留学中、沖田さんに連絡は全くなかったと言うし…。 まさ、か…ね。 「なまえもただの人間だからね」 なんとなくズーンと沈んだ空気の中、学校にたどり着いた私たちは、終始無言だった。 なんだか気まずい。 「ま、なまえなら大丈夫だよ」 私の顔が一番暗かったのだろうか、一番わかりやすかったのか、平助くんは私を励ましてくれて。 「平助くん、ありがとう!」 「お、おぅ…」 顔を真っ赤にした平助くん。 私はこの人のことが好きだと実感する瞬間。 きっと大丈夫。 → |