35「しかし、」 校長の突然の否定の言葉に驚いた。そして、この後の言葉にもっと驚くことになる。 「みょうじさん、あなたにはアメリカへ留学してもらいます」 「りゅ、留学ぅ?!」 『平助…声でかいわ…』 昼休み、屋上で先程の報告をみんなにする。その結果、最初に声を出したのは平助だった。千鶴も薫までもがポカーンとしていてなんだか笑える。 「お、沖田さんは知ってたんですか…?」 「知ってたよ」 知ったときは流石に吃驚したけどね、と続ける。 今回の留学は、校長が私に気を使ってくれたこと。表向きは退学だが、留学し、ちゃんと高校卒業してほしいそうだ。そして、何故だか私が英語出きることを知っていた。 「けど、あちらの学校は最短で卒業することは難しいと聞いたことがあるのですが…」 「じゃあ会えるのはもっと先ってのもありえるのか…」 しゅん、とうなだれてる小動物二匹。可愛いったらありゃしない。 「沖田はいいの?」 「何が?」 「なまえが留学しても」 総司は、ちょっと考えた振りをしてから「大丈夫だよ」って答えた。 「なまえが絶対帰ってくるって言ったからね」 そう。 私は約束した、絶対帰ってくると。 『うん、最短で帰ってきてみせる』 「なんかなまえさんが言ったら本当に帰ってきそうです」 『帰ってくるよ?!』 「出発はいつ?」 『来週だって』 「はっや!」 流石に私も早いなって思ったけど、だけど仕方ないもんね。 今回のことは本当に急だし、いくら彼方が悪いとしても私にも非はある。 総司は気高く振る舞っているようにも見えるが、時折悲しい顔をみせる。それが、千鶴ではなく私に向けていることに嬉しさを覚えて。 だから、余計に少しの間と言えど別れは惜しい。 きっと見送りなんてされたら行きたくなくなるだろう。 『見送りはしなくていいからね』 どうか、最後の我が儘を聞いてください。 → |