長編恋の解き方 | ナノ




09




総司side


どうしてもなまえの顔をまともに見れない。

そう思ったのは朝。
なまえが古典のプリントを家に取りに行った後、千鶴ちゃんと話していたのが原因。

千鶴ちゃんがいきなり「なまえさんって可愛くなりましたよね」って言ってきたからだ。

最初付き合った頃は千鶴ちゃんを忘れるために利用しようと思ったなまえ。
彼女が僕のことを好いているのは知っていた。

だからこそ利用しようとしたんだ。


「なのに…」


どんどん可愛くなっていく彼女に、僕はいつの間にか目で追ってしまっていて。

千鶴ちゃんに抱いていた感情とはまた違っていた。


「僕は千鶴ちゃんのことを好きだと勘違いしていたのかな」


そう口に出すとしっくりくるものがある。

あぁ、そっか。


「なまえのことが好きなんだ」


彼女にしてしまう素っ気ない態度も。
ついつい恥ずかしくて千鶴ちゃんの方へ行ってしまうことも。
他の男と話していて腹が立つことも。

全部君が好きだから。


『あ、総司みっけた』


振り返れば愛しい彼女の姿。

なんだろう。
心なしか甘い匂いがする。


「なまえ、飴舐めてるの?」

『うん!さっき左之ちゃんから貰ったの』

「そう…」


ほら、イライラする。
幼なじみだかなんだか知らないけど、僕のなまえに近づかないでほしい。


『総司も欲しかった…?』

「いや…」


だめだ。
無性に腹が立って素っ気ない言葉しか出てこない。

僕は苛立ちをなまえに向けないためにこの場から立ち去った。

後ろでなまえが悲しい顔して溜め息を出していることも知らずに。














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