長編誰がために | ナノ




ここの人たちは…。




あれ。ここどこだ。辺りを見回して気づく。そういえば昨日の夜、新選組に捕まったんだった。


「にしてもきついな…これ…」


女の子相手に何するんだろうか。まぁ、女の子の格好してないけどさ。女の格好だと危険とか、それ以前に動きづらくて嫌なんだよね。
その時、襖が開いて斉藤一が来た。大方、私を呼びに来たのだろう。


「起きていたか。来い」


ほら当たり。ずんずん歩いた先にはわいわい騒いでいる部屋を見つける。まさかとは思ったが、この部屋のようだ。

開けた瞬間にシンと静かになり、殺気が凄い。この殺気だけで何人殺せるんだろう。


「こいつが目撃者?」

「あいつと同じぐらいじゃね?」


口を開いたのは、えっと…永倉新八と藤堂平助か。隣は原田左之助で、奥にいるのは土方歳三と山南敬助と近藤勇…で、右側は沖田総司と斉藤一ね…。ふむ、幹部勢揃いってところだ。この場からは逃げれないってこと。


「失礼します」


入ってきたのは、人数分のお茶を持っている雪村の娘。男装してるんだろうが、あんまり効果がない。可愛いな。


「千鶴ありがとな!」


藤堂平助が彼女のことを「千鶴」と呼んだ。雪村千鶴…か。もしかして…あの人の…?雪村綱道の…。


「彼、あれ殺しちゃったんですよ。生かしておけないじゃないですか」

「殺っちまったのか?!あれを?!」

「それは益々見逃せねぇな」


やっぱりそうなりますよねー。まず逃がす理由がないし、私なら殺してる。口封じの為に。


「…お上の民を無闇には殺せん」

「でもよ、近藤さん…」


中々に結論が出ないでいるな。新選組局長が、良い人だ。そのうち騙されそう…。


「男なんだから潔く死ぬのも道だぞ?」


原田左之助が私にそう言うが…私女なんですけど、とも言えず。言ったら何か変わるかしら。


「あのー…一ついいですか?」

「どうした、雪村」

「その方…女の方だと思うんですが…」


みんなが唖然としている。それは、私も例外ではなく。


「どうしてわかったの…?」


そう言えば、今度は驚きの声がこだまする。雪村千鶴は「なんとなく…そう思ったんです」って言ったけど、土方歳三らが気付かず、彼女がわかったのは同じ種族だから?


「お前は、何故あそこにいたんだ」


やっと喋らしてくれるのか。そろそろ痺れを切らしていたところだ。でも、言えるほどのことはない。


「ただ、旅をしていただけです。その途中、あの隊士たちに襲われ、自分の身を守りました」


それだけです、と言えば「やっぱ殺しちゃった方がいいですよ」と沖田総司。こいつ物騒だなぁ。


「女子だと余計に殺せまい」

「近藤さんは甘いんですよ」


これじゃ何時まで経っても結論は出ないじゃないか。いい加減足も痺れてきたし。一つ深呼吸をして。


「私は殺されても構いません」


それまでワイワイやっていた声は途端止み、私に視線が集まる。


「それは…なんでだ?」

「だって生かす理由もないんでしょう?なら殺してしまった方が都合が良いし」

「ほら、彼女もこう言ってますよ」

「総司はちったぁ黙れ」


土方歳三は沖田総司に渇を入れる。そしたら、沖田総司が子供のように拗ねた。なんだこいつ。我が儘な餓鬼みたいじゃん。


「(本当に強いのか…?)」


疑いの眼差しを向けていると目が合ったが、笑われたよ。なんで?


「はぁ…とりあえず部屋に戻せ。何聞かせるかわからないからな」


土方歳三のこの一言によって私は部屋に戻ることになる。処分は決まらぬまま。


「どうなるんだろうね」


若干楽しそうな自分がいることに吃驚する。まぁ、死のうが生きようがどうでも良いだけなんだけど。


「沖田総司…だよね。監視ですか?」

「気配消していたはずなんだけどなぁ」


襖から出てきたのはやっぱり沖田総司だ。確かに気配消すのは上手かった。だけど、旅人なめんなよ。


「旅してましたからね、気配には敏感なんです」

「そうそう、そんなに若い女の子がなんで旅してたの?」

「暇だったから」

「ふーん…親とかは止めなかったんだ」

「いないから止めようがないじゃない」


沖田総司は目を見開き吃驚してから、


「その気の強さ気に入ったな」


と言った。今度は私が吃驚する番だ。まさかそんなこと言われるとは思わなかったから。


「何してんだ、総司」


現れたのは近藤勇、土方歳三、山南敬助。


「土方さんがいるってことは彼女の処分決まったんですか?」

「あぁ…新選組で預かることにした」

「は…?」

「その代わり、てめぇのこと全て話せ」


私の知らぬ間に事が進みすぎていて、ついていけません。はい。









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