長編不器用な青春 | ナノ




07




来る日も来る日も机には落書きされているし、物がなくなるのはしょっちゅう。
体に痣や切り傷はたくさんあるけど、顔を叩かれたのはこの間が初めて。

親は共働きで、夜遅くまで帰ってこないのをいいことに、私は毎日千鶴の病室にお見舞いに来ていた。

黒幕名前は学校が終わると一緒に帰るものの、寄り道は絶対しなかった。
だから、毎日花を買ってお見舞いに行くことができた。

今日は朝に時間があったから、早めに家を出て千鶴のもとに行った。
どうしても元気がほしくて。


「千鶴早く目を覚ましてね」


毎日千鶴のお見舞いに来ていると黒幕名前が知ったら…ううん、怖すぎて考えたくもない。

その時、いきなり携帯が震えだしたかと思ったら黒幕名前からのメールだった。
まさかバレた…!?


“今どこ?私が先に待ち合わせの場所についたんだけど”


バレてはいないみたいかな…。
良かった、と思い、急いで待ち合わせ場所へと向かう。
黒幕名前はその場で腕を組み「遅い!」と私を一瞥する。
私の方が先に着いていなくてはいけない、なんて言われてないのだが、私よりも早く着いてしまったことに腹を立てているようだ。
そう言えば、今までは私の方が先だったなと思い返す。


「今日も私を守ってねー!」

「わかってるよ」


もっとも、守るのは黒幕名前じゃなくて千鶴だけどね。

学校に行けば、今日も陰口、暴力、紛失と、毎日毎日飽きないなって感心してしまうほど。
教師も教師で、見てみぬフリで。
こんな地獄みたいな日々も、黒幕名前との会話も、学校の授業も全てどうでもよくなっていた。


「あれー?みょうじさんと黒幕名字さんじゃなーい」

「なんでこんなところにいるの?」


なんでと言われても、ただ廊下を歩いていただけだ。
それすらも不満なこの子たちは、私の髪の毛を引っ張ったり、殴って蹴って、暴力を受けそうになっている黒幕名前を守らなくちゃいけなくて。

辛いよ…痛いよ…誰か助けて…。

願っても何をしても助けてくれる人なんて、この学校には存在しない。
かつて友達と呼ばれる人は離れて行き、好きな人にまでも拒絶される日々。

この状況を千鶴が見たらなんと思うのだろうか。
あの子だったら変えようと努力するんだろうな…。


「毎日ご苦労様!」

「いい憂さ晴らしになったよ!ありがとねぇ!はははっ」


どうやらやっと女たちの気分は晴れたみたいだ。
とってもいい笑顔で去っていく。
また…痣が増えてしまった…。


「なまえちゃん…大丈夫…?」

「え、あぁ、うん、大丈夫」


心配している顔をしていたから吃驚して拍子抜けしてしまった。
これも演技のうち…?
内心は喜んでいるんでしょ?


(2012.4.5改正)










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