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俺は自他共に認める不細工だ。



謙遜とかそんなんじゃなくて、本当に不細工だ。

どれぐらい不細工かっていえば、美男美女の両親から「息子がいるんですよ」と聞かされて「さてさてどんな美少年なんだろう」と期待に胸を膨らませていた両親の友人が落胆のし過ぎで思わず「養子ですか?」なんて聞いて父親からぶん殴られそのまま絶縁・・・ということが起こるぐらいである。ちなみにこれは俺が小学生の頃の出来事だ。


ちなみに両親は俺の事をそりゃもう可愛がっていて「天使」や「子兎ちゃん」と呼ぶことも稀にある。

天使?子兎ちゃん?両親が言うならそうなんじゃね?違う違う。


何を隠そうこの二人、何と揃いも揃ってB専だったのだ。B専って何かって?不細工専門のことだ。



ならば何故両親が結婚したのか?両親は共に良いトコの出で、二人は政略結婚。それだけ。

政略結婚で顔の好みとは全然違ったのだが、お互いの趣味が同じと知るとまるで友人のように仲良くなった両親は、俺が産まれた時そりゃもう喜んだそうだ。どれぐらいかって?普段は温厚な両親が「おっしゃぁぁぁああッ!!!キタぁぁぁぁああああッ!!!!!」と雄叫びを上げるぐらいだ。


余談だが、母親が退院する時に「奥さん!赤ちゃん間違ってませんか!?」と看護師の一人が割と本気で母親を呼び止めたらしい。母親は笑顔で「私の天使に何かご不満?」と返して颯爽と帰ったらしい。イケメン。







そんなこんな、美男美女の両親の間に望まれ産まれた不細工の俺は、現在高校生。

絶賛虐められています。


まぁこの顔だと仕方ない。



小さい頃からのあだ名は『養子』か『貰われっ子』で完全に両親との血の繋がりを疑われている俺ではありますが、両親に頼み込んでやってもらったDNA鑑定では完全に血の繋がりがありました。

顔のせいで虐められて嫌われて、顔は悪いけど図体だけはデカイから女子からは気味悪がられて・・・


まぁ両親共にモデル体型のめちゃんこ長身だから仕方ないね!そこだけは受け継いじゃったよ!





「おらデカブツ!これ持てよ!」

「おっ!じゃぁ俺のもよろしくー」

「おーい!デカブツが荷物持ってくれるってよー!」

「さっさと運べよなー」

「お前も運ばせれば?」

「私は自分で持つー、だって荷物触られたくないし」




おーおー、遠慮なしに次の授業の道具を押し付けてくる生徒の多いこと多いこと。

俺が同級生よりも明らかにデカイせいで新たに付いたあだ名『デカブツ』は完全にクラスに馴染んでしまったらしい。あ、クラスだけじゃなくて他クラス、果てには他学年の生徒も知っているらしい。浸透率怖い。


俺に荷物を渡してさっさと退散してしまったクラスメイトたちの背中にため息を一つ零しながら、俺は教室をゆっくり出る。




休み時間が終る前に移動先の理科室に到着すれば良いんだ。別段焦る必要もない。

それにしても毎日毎日他人の荷物を運ぶせいで、最近凄まじく筋力が付いてきた気がする。


・・・筋肉付いてこれ以上デカブツになったら、今度はあだ名が『デカブツ』から『ゴリラ』にシフトチェンジしそうだな。




そんなことを思いながら上る階段。

ふと視線を上げれば、俺の前をすらりとした長身の男子生徒が歩いていた。まぁ長身と言っても俺よりは確実に小さいけれど。


身長の割には細くて、何だか女子みたいだなぁとその背中を見つめる。もし相手が振り返れば俺は完全に不審者か。そうか。


ぼんやりと馬鹿なことを考えていると、突然目の前を歩く生徒の身体がぐらりと揺れた。



え?と思った時には生徒の身体がこっちに落ちてくる。

咄嗟に手の中にあった教科書や筆箱を落とし、降ってきた生徒を受け止める。


危ない!本当に危ない!と内心ドキドキしつつ、相手の安否を確認。相手は「うっ」と呻きながらも俺を見た。目が合う。




「・・・貴方は」

切れ長の綺麗な目。


鼻筋も通っていて髪の毛もさらさらで細くて、割と一発で『美少年』だと分かる腕の中の彼に俺は慌てる。




「あ、ご、ごめん、離す!」

「待ってください、まだ、眩暈が・・・」


「わ、わかった」

体調が悪いのだろうか。眩暈がするというその生徒の身体を支えたまま、ちらりと足元に視線を移せば、あぁ教科書たちが大変なことに。これは一悶着ありそうだ。


相当具合が悪いのだろう。俺の胸に頭を預けて目を閉じている彼の背を恐る恐る撫でる。

ぴくっと彼の瞼が震えたけど、拒否される様子はない。





「だ、大丈夫・・・じゃないよね。保健室行く?」

「・・・いえ、少し休めば治ります。寝不足なだけですから」


「保健室で寝れば、どうかな・・・」



相手は良いと言っているけれど、また階段から真っ逆さまになるなんてことは阻止しないと。今回は俺が受け止められたから良かったものの、次はそうはいかないかもしれないから。

俺の言葉にゆっくりと目を開けた彼。改めて綺麗な顔だと思う。




「保健室まで、遠いので」

「あ、じゃぁ俺が連れて・・・」


「これ、運ばないといけないんでしょう?」


その言葉に顔が引きつる。あぁ、確かに。

俺の表情に彼はそっと俺の胸を押して身体を離す。手も細い。




「僕の事は気にせず。それでは・・・」

そういって再び階段を上りだす彼。けれどその足取りは危なっかしい。


俺は小さく唸る。この教科書を早く拾いあげて理科室に運ばなければならない。さもなくば虐めは悪化する。

けれども彼を見捨てれば、最悪彼は転落死。



人命と保身。割と壮大に考えてしまっているかもしれないが、最悪の事態を考えるとこれは大きな選択だ。

そしてその大きな選択肢、俺が出した結論は・・・





「待って!保健室行こう!」

教科書を放置で彼を保健室に送り届ける、だ。





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