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ささっと床に散らばった教科書類を階段の隅っこに寄せ、彼に駆け寄る。

驚いたというか、怪訝そうに俺を見てきた彼に心が折れそうになりつつも「行こう」と声をかけた。


すると彼は小さくため息を吐き「じゃぁお願いします」と俺に少しだけ寄りかかった。


やっぱり歩くのが辛かったのかもしれない。

背負おうか?と聞いたけど流石にそれは断られ、俺は彼の身体を支えながら保健室へと歩いた。





保健室に到着し、彼を先生に引き渡すと彼への挨拶もそこそこに俺はそのまま全力失踪。

階段に置き去りだった大量の荷物を両手に抱えて理科室へ。


が、そうあっさり間に合う訳もなく。俺が理科室に到着した時、俺に荷物を押し付けた生徒達が理科の教科担に説教を受けているまっただ中だった。

恐ろしい程の恨みの視線を受けつつ説教を受けていない生徒からは軽蔑の視線を受けつつ・・・



あぁ虐めは悪化するのかと諦めた。まぁデカブツと呼ばれるだけあって肉体的に受けるダメージは少なく、受けるのは精神的ダメージだけなのだが。それでも辛いっちゃ辛いのだが。

人命には代えられないよな、と無理やり自身を納得させ授業を受けた。













まぁこうなるわな、と翌日の教室で一人納得する。

荷物を届けるのが遅れただけでなく、届けた荷物の中には落としたせいでページが折れていたり汚れていたりしたものもあり、それが彼等の怒りを助長させたらしい。


ひっくり返された机とゴミ箱にシュートされたっぽい俺の荷物。

ノート類は隈なくボールペンでグチャグチャに落書きがされ、挙句シャーペンの芯が全部折られていた。ちなみにこれが俺の中で一番痛い。ノートも教科書も無くても、家にある予備の教科書で授業の復習をすればなんとかなるし、我が家には教師よりも頼りになる頭を持つ父親がいたりする。問題ない。




「おいデカブツ、何とか言ったらどうなんだ?」

「こいつ反応薄くてつまんねー」

「うっわ、ゴミ箱漁ってる。きったねー」


ひっくり返されてた机を元に戻し、ゴミ箱の中から荷物を回収。席に着いて授業の準備。おっと、今日はもうシャーペンが使えないから、全部ボールペン記入か。

クラスメイト達からの罵倒やらなんやらを聞き流し、授業が始まれば授業に集中し、休み時間になれば席に座ったままぼんやりとする。


デカイから一番後ろの、それも真ん中の席。割と目立つその席に座っていると、当然嫌がらせをしにくる生徒もいる訳で・・・

けれども今日はそれよりも先に、思いがけない人物が声をかけてきた。







「名前くん」







デカブツ以外の名前で呼ばれることなんて早々ない。

驚きにぱっと顔を上げれば、目の前にはあの時の美少年がいた。


あの時とは違うのは、今日はその美少年の顔色が良いということと、その顔に笑みが浮かんでいるということだろうか。


クラスがざわめいている。

そのざわめきの原因は明らかに目の前の彼で、どうやら彼は有名人だったらしい。そんな有名人な美少年が俺に何の用だというのだろう。




「えっと・・・」

「高遠遙一です、名前くん」


「あ、えっと・・・高遠くん、か」

おい高遠がアイツに何の用だ?とひそひそ声が聴こえる。



「昨日は有難う御座いました」

「お、お礼を言うために、わざわざ?」


「えぇ。それと、今日お時間ありますか?お礼も兼ねて、二人で放課後何処かへ行きましょう」

「えっ」


「出来れば、僕とお友達になりませんか?」

「えっと・・・」

何が起こっているのかわからないが手を差し出されたからその手を握れば、高遠くんはにこりと満足そうに笑って、ざわめく教室がさらにざわめいた。





「あ、あの、お・・・俺と仲良くしたって何のメリットもない、と思う」

「メリット?」


「確かに荷物持ちとか力仕事とかなら役立つと思うけど、ほら・・・見た目悪いから、一緒に居たら高遠くんが迷惑すると思うし・・・」

「何故?貴方はまるで紳士で素敵な人なのに」


おや、こんな褒め言葉には何やら既視感を感じるぞ。




「紳士で素敵って・・・」

「名前くんのように逞しくて優しい人のことですよ」



ほらやっぱり既視感。

その正体を俺は理解する。





「・・・名前くんは、とっても素敵ですよ」





にこりと笑う、頬をほんのりと染めた高遠くん。


その姿は、俺を天使だの子兎ちゃんだのと可愛がる両親の姿と被った。

もしかしてもしかするかもしれない。




「あのさ、高遠くん。俺って不細工でしょ?」

「不細工?ふふっ、何処がです?とても素敵ですよ」


本心だとしか思えないうっとり顔とその言葉で確信。





「そ、そっか・・・」

両親はB専。彼もたぶん・・・B専だ。







ちょっぴり特殊な人たち








こんな人しか集まらない。



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