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もしもし、俺だけど




電話番号?

何時教えたかなんて覚えてない。


けれど、確かに『教えた』という記憶はあった。






もしもし、俺だけど






それでも、その突然の電話に驚かないわけがない。


母親が夜中まで仕事をしている僕は、家で何時も一人で・・・



かかってきた電話に出るのは僕だということは当たり前。

何の覚悟もなしに出た電話から聞こえた彼の声に、僕は瞬間的に受話器を落としそうになった。


・・・けれどなんとかそれを押さえる。






「俺だけど・・・じゃ、わからない」

本当は声だけでわかった。


だって、彼の声を何時も聞き逃さないように注意していたのだから。




《あ、ごめん。##NAME2##だよ、##NAME2##》


電話越しに聞こえる彼の声に僕の肩がピクッと震えた。





僕とは違って、何処か活発そうなその声。

耳から脳にまで広がりそうなその声に、僕は「・・・何のようだ」と、ついつい無愛想に返事をしてしまう。




何時もそうだ。


学校でも、彼は僕にわざわざ話しかけてくれるのに、肝心の僕はこうやって無愛想な返事しか出来ないんだ。




気を害した様子も無い彼を見るたびにほっとする。


もう僕に話しかけたくないと思われてしまったらどうしよう。その不安が、何時だってあった。





《あぁ、そうそう。先週、宿題出ただろ?俺、すっかり忘れてたんだ。範囲、何処だったっけ?》



「・・・まだやってなかったのか。間に合うのか?」

ついつい呆れたような声を出してしまう僕に、電話越しの彼が笑った。




《ははっ。今夜は徹夜の予定だ》

その言葉に「そうか・・・」と短く返事をしてから、僕は先週宿題が出されてすぐに終わらせたその宿題の範囲を教える。





彼には沢山友達がいるのに・・・


その中から僕に電話をしてくれたことが、実は嬉しかったり・・・。










《有難う、セブルス》










「っ、あぁ・・・」

その言葉で、僕がどれだけ嬉しいと思ってしまうのか、彼は知らない。


彼の言葉が胸に広がって、顔が熱くなる。




電話越しで良かった。

こんな顔、見られたくないから。




《本当に有難う。じゃ、俺は宿題に死力を尽くすよ》

「・・・せいぜい頑張ることだ」


《よーし。頑張るぞー》


電話越しで彼が笑っている。

彼の笑う顔が、頭の中で想像できた。


学校でも彼は何時も笑ってる。

太陽みたいに、暖かく優しく・・・




《じゃぁね、セブルス》


「・・・あぁ・・・」



プツッと切れた電話。



嗚呼、そうだ・・・



「初めてだ・・・」

彼と電話で話したのは、コレが初めてだった。






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