声、聞きたいと思って
夜。
また家では一人。
けれどそれは幼いころから続いているから、もう淋しいとは思わない。
自分で適当に夕食を作って食べる。それが日課。
下手をすれば、朝起きれば既に母親がいない時もあるから、朝食と昼のお弁当まで自分で作るんだ。
きっと今日は朝も母親と顔を合わせることはないだろうと思った僕は、明日の弁当のおかずの準備を軽くしておく。
プルルルルルルッ
「ぁ・・・」
電話だ。
僕はカチッとコンロの火を止めてから電話の方へと駆けて行く。
ガチャッ
「もしもし――」
《もしもし、セブルス?》
また、受話器を落としそうになった。
《○○だけど》
そんなの声で分る。
緊張で声がひっくり帰らないか心配だ。
「な、んのようだ・・・」
嗚呼、緊張する。
電話越しの彼は《んー、特に意味はないけどさ》と言ってくる。
「何を馬鹿なことを。電話代の無駄だ」
心にも無いことを言ってしまう。
嫌われたらどうしよう。
胸の中が不安で一杯になってしまう。
《ははっ。そういわないでよセブルス》
不安とは裏腹に、返って来たのは明るい返事。
その声にほっとしつつ「・・・本当の理由は?」と尋ねる。
だって、○○が何の理由もなしに僕の家に電話をかけてくるわけがないじゃないか。
また宿題のこと?それとも、明日の教科のこと?
《んー、理由かぁ・・・》
電話越しで彼が困った声を出す。
しばらく返事を待っている僕に、彼は・・・
《声、聞きたいと思って・・・じゃ、駄目かな?》
「っ!?!!!?!!??!!?」
言葉を失う。
だってだってだって・・・
「じょ、冗談も程ほどにしろ」
《そういうと思った》
クスクスッという声がする。
・・・からかわれたのだろうか。
「からかうな」
《からかってないよ。用事は無かったけど、何か電話したくなったんだ》
嬉しい。けど、それを言葉に出せない。
「迷惑だ」
嘘。迷惑じゃない。
《んー。けど俺はセブルスの声聞けて安心したよ》
ドキリッとする。
ねぇ、それは・・・どういう意味・・・?
《おっと。あまり長電話は駄目だね。じゃぁね、セブルス》
「なっ、ちょ――」
プツッと切れる電話。
「な、何なんだっ、一体!」
嗚呼どうしよう。
心臓が痛いぐらいに激しく動いてる。
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