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リヒトが泣き始めると同時に、全員本格的に泣き始めた。
途中まで堪えていたマルコでさえ、声を上げて泣いている。
泣き声の大合唱。
リヒトは優しい男だった。
家族想いの、優しい優しい男だった。
優し過ぎるぐらい、優しい男だった。
どんなに壊れてしまったって、本質的な彼の優しさは変わることはない。
優しく家族を見守る彼は、当然家族から愛されていた。
愛しい家族が傷ついてる姿を見て、悲しまないヤツがこの船の何処にいようか。
リヒトは傷ついた。皆傷ついていた。だから泣いた。相手を想って泣いていた。
「リヒト」
「なぁに、エース」
「・・・俺、今日はリヒトと一緒に寝たい」
「ははっ、ついさっきまで弟の前で兄貴ぶってたのにか?」
「・・・寝る」
「はいはい、わかったよエース」
「おいこらエース、ズリィだろソレ。おいリヒト、俺も俺も」
「何言ってるんだよい。当然俺もだろい?」
「グラララ!おい、馬鹿息子。今日は俺と寝るか」
「あ、ズリィよ親父!」
「じゃぁ全員で雑魚寝だな、こりゃ」
優しい男は、家族が楽しげに笑う姿を見て、嬉しそうに笑った。
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