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31



上陸したとある島の酒場で、麦わらの海賊団一行は食事を取っていた。

そして当然の如く食事のお代わりを要求するルフィはカウンターの方に「おっさーん!おかわりぃー!」と言って駆けて行った。


勢いが良すぎたのだろう。

飛び出したルフィの身体がどんっとカウンターで酒を飲んでいた男の身体へとぶつかる。

おっと、と小さく漏れる声。手から滑り落ちるグラス・・・





パリーンッ




ナミは慌ててルフィの頭を殴った。


「こらルフィ!!!・・・ごめんなさい、あの・・・すぐに弁償――」

「あぁ、いいんだよ。何も割れてないから」


「え?けど・・・」

言いかけてナミは目を見張る。


男の手には、先程落としたはずのグラスが握られていた。

零れたはずの酒も元通り。


にこりと笑った男は「ほら、だから気にしないで」と言ってグラスの酒を一口飲んだ。




「すっげぇ!なぁ、今のどうやったんだ!?」

「ははっ、好奇心旺盛だなぁ、少年。もしや海賊かい?」


「おぅ!俺は海賊王になる男だ!!!!」

すると男は楽しそうな笑い声を上げた。



「そりゃぁ良い!けど、残念だったなぁ・・・海賊王になるのは、俺の親父だ」

「ちげぇ!俺だ!」



「はははっ、元気だなぁ」

ルフィの言葉に気分を害す様子もなく、穏やかに笑っている男に、一味は安心して自分たちの食事へと戻った。


ルフィは「なぁ、さっきの教えてくれよ!」と言って男の隣に腰かける。

男は「さぁなぁ、どうやるんだろうなぁ」と適当な言葉を返す。


興奮した様子のルフィが「何かやってくれよ!」とせがむ。

そんなルフィを優しい目で見つめた男は「仕方ないなぁ・・・」と言いつつ――






「すっげぇ!料理だ!!!」



空になっていたルフィの皿に料理を出した。

目を輝かせていたルフィだが「ん?」と首を傾げる。





「ははっ、驚いただろう?さっき自分が食べたはずの物が、元通りになってるんだから」

「ほんとだ!さっき食ったのに、腹減った!」


もがっと皿の上の料理を食べ始めるルフィに男は笑いながら酒場の親父に追加の料理を注文した。

次々と出される料理を、何故だか麦わらの一味のテーブルへと運ばせる。




「奢りだ。沢山食べて、強くなれ」


「いいのか!?いいやつだな、お前!」

「はははっ、気にするな」

席から立って料理へと飛びつくルフィ。男はやはり優しい目をしてルフィを見ていた。





男はテーブルの上に金を置き、ゆっくりと席を立つ。

もう行くのか?とルフィが尋ねる。あぁ、と男は頷く。


すたすたと外へと続く扉へ近づいていき――









「あぁ、そうだ少年。もしエースに会ったら『道中気を付けろよ』って言っておいてくれ」









エースの知り合いなのか!?と驚くルフィを無視して、男は店から出て行く。


慌てて追いかけようとするも、既に男――リヒトの姿はなかった。






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