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《サッチSIDE》
俺とアイツは仲が良かった。
あぁそうそう、マルコもアイツと仲が良かった。三人とも、親父の息子になった時期がほぼ同じだったからかもしれない。
自他共に陽気な俺と、変なところでクソ真面目なマルコ、そして誰にだって優しい優しいリヒト。
今より若い頃は、三人でつるんでよく悪さをしては親父に怒られていた記憶もある。それぐらい、仲が良かった。
リヒトは優しい。けど優し過ぎて少し心配性なところもあった。
そこそこ真面目で、俺が絡めば笑顔で応えてくれて、家族想いの仲間想いで・・・
仲間が傷つくことを誰より嫌って、まるで自分のことように悲しめる男。聖人君子とまではいかないが、常にリヒトは優しい眼で俺達家族を見守っていた気がする。
そんな感じに、普段は落ち着いた大人を気取ってる癖に、俺が作った料理を「美味い」と言いながら口いっぱいに頬張る姿は餓鬼みたいだった。
信頼してた。信頼されてると思った。
長年積み上げてきた絶対的な信頼関係だった。
これから先も、それが続くと当然俺は思ってた。口には出さないが、マルコも同じように思っていたと思う。
だから・・・
「船、降りるんだ」
「・・・は?」
どうしてそんな重要なことを、相談の一つしてくれなかったんだ?
「マルコ・・・出来る限りで良いから、サッチと一緒に居てくれないか。サッチは、出来るだけ一人になるな。マルコ以外の奴なら二人でも駄目だ。常に三人以上で行動しろ」
俺が何かを言う前にくるっと俺に背を向け、歩き出すリヒト。隣のマルコも困惑していた。
大事な仲間が何の相談も無く船を降りた。
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