×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




30



《サッチSIDE》


俺とアイツは仲が良かった。


あぁそうそう、マルコもアイツと仲が良かった。三人とも、親父の息子になった時期がほぼ同じだったからかもしれない。


自他共に陽気な俺と、変なところでクソ真面目なマルコ、そして誰にだって優しい優しいリヒト。

今より若い頃は、三人でつるんでよく悪さをしては親父に怒られていた記憶もある。それぐらい、仲が良かった。


リヒトは優しい。けど優し過ぎて少し心配性なところもあった。

そこそこ真面目で、俺が絡めば笑顔で応えてくれて、家族想いの仲間想いで・・・



仲間が傷つくことを誰より嫌って、まるで自分のことように悲しめる男。聖人君子とまではいかないが、常にリヒトは優しい眼で俺達家族を見守っていた気がする。

そんな感じに、普段は落ち着いた大人を気取ってる癖に、俺が作った料理を「美味い」と言いながら口いっぱいに頬張る姿は餓鬼みたいだった。


信頼してた。信頼されてると思った。

長年積み上げてきた絶対的な信頼関係だった。


これから先も、それが続くと当然俺は思ってた。口には出さないが、マルコも同じように思っていたと思う。



だから・・・





「船、降りるんだ」





「・・・は?」

どうしてそんな重要なことを、相談の一つしてくれなかったんだ?


「マルコ・・・出来る限りで良いから、サッチと一緒に居てくれないか。サッチは、出来るだけ一人になるな。マルコ以外の奴なら二人でも駄目だ。常に三人以上で行動しろ」

俺が何かを言う前にくるっと俺に背を向け、歩き出すリヒト。隣のマルコも困惑していた。







大事な仲間が何の相談も無く船を降りた。


(残ったのは、たったそれだけの事実)






戻る