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あいつは嫌なヤツだ、とエースは思う。
自分とすれ違う度に
「ん?まだ船を降りねぇのか?」
ケラケラとキチガイの笑い声を上げながら聞いてくる。
その度にサッチやマルコ、他の仲間があいつを睨み怒鳴る。
けれどもあいつは変わらない。
昔はあんなヤツじゃなかったと、誰もが言う。
誰よりも優しい、他人の心配ばかりするヤツだったと、誰もが言う。
どうしてあんな風になってしまったかなんて、誰も知らない。
仕方がない。
だってあいつは、突然狂った。
朝起きて、突然狂って、狂ってしまって・・・
エース隊長格となっても態度は変わらない。
それどころか、更に船から降りろと言うことが多くなった気がする。
「あーららぁ?まだ船を降りてないのかぁ?お前はよぉ」
ニヤニヤへらへら、ニタニタ、きひきひ・・・
気持ち悪いぐらいの笑みを浮かべたあいつが近づいてくる。
エースの中で切れていたものが再び切れる様に、ブチッと音が鳴る。
「いい加減にしろよ!!!!俺が手前に何したって言うんだよ!!!!」
限界に来たエースが怒鳴る。
そんなエースに臆することなく、リヒトはへらりと笑った。
「いいから・・・とっとと船を降りろよぉ」
一瞬だけリヒトが悲しげな目をしたことを、怒りで頭に血が上ったエースは知ることが出来なかった。→戻る