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10



「なぁ、サッチ。アイツは誰だ?」

「あ?あぁ、アイツか。アイツはリヒトって言うんだ」

「へぇ、おーい――」



「止めとけ」

「何でだ?」


「アイツ、昔は良いヤツだったんだけどなぁ・・・何時からかわからねぇが、言葉が通じなくなっちまったんだ」

「?」


「・・・まぁ、簡単に言えば、頭が可笑しくなっちまったらしくってよぉ。話しかけない方が良い」

「・・・へぇ」

じゃぁ何で船に乗ってるんだ?と尋ねれば、親父の恩恵だ、とサッチは笑った。その笑みは苦笑だった。

すると、ふと男がエース達を見た。


見てるこっちがイライラするような、ニタニタした笑みを、男は浮かべて近づいてくる。



「おーやー?サッチぃ、ソイツは誰だぁ?」

「・・・よぉ、リヒト」

「俺、エースってんだ。よろし――」





「反対」




「・・・は?」

「俺は反対だぁ!コイツ、親父を殺そうとしてたヤツだろぉ?こんなヤツ船に乗せるなんて、俺は反対だからなぁ!あーあ、気色わりぃ、手前なんて、すぐ降りちま――」






バキッ

サッチに殴り飛ばされたその男を、エースは無言で睨みつけていた。


床に倒れた男は、ケタケタと狂ったように笑っていた。






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