「よぉ、新人君。さっきは災難だったなぁ」
ジョルノがアバ茶による歓迎を受けた後、一人の男が近づいてきた。
「けどまぁ、アイツも悪いヤツじゃねぇんだ。許してやってくれ」
「まぁ、はい・・・」
突然話しかけてきた男にまったく警戒心がないわけではないジョルノは男を軽く観察した。
「俺はナマエ。一応先輩だからさ、わからないことがあったら教えてやるよ」
赤いシャツに黒のスーツを羽織って、首や手には沢山のアクセサリーを付けたその男は一見ホストに見えなくもないが、にかっと明るく笑う様子には好感が持てた。
「えぇ、よろしくお願いします。ナマエさん」
「あぁ、良いって良いって!ナマエって呼んでくれよ、さんって付けられるほど、俺偉くねぇし」
ははっと笑いながら言ったナマエは「ほら」と言いながらジョルノに缶ジュースを渡す。
「まさかマジでアレを飲んだとは思ってねぇけど、口直しってヤツだ。丁度冷蔵庫に入ってたからやるよ」
「有難うございます」
素直にそれを受け取ったジョルノ。
もちろん、その缶ジュースになにか仕掛けられているかもしれないという疑念は拭いされないため、すぐには飲まない。
「一応言って置くが、俺は他人に変なモン飲ませたりしねぇよ?」
ジョルノが疑念を持っていることに気付いているのか、悪戯っぽく笑うナマエにジョルノは「すみません」と謝る。
「謝ることじゃねぇよ。ま、これからきっと長い付き合いになる。仲良くしていこうぜ?」
良い先輩をそのまま表したかのように輝いている笑み。
「じゃ、またな」
そう言いながらナマエはジョルノの目の前でくるっと踵を返し――
「・・・アブッ!?」
「え?」
颯爽と、それはもう格好良く去っていくはずだったナマエは床に落ちていた瓶を踏んづけてそのまま豪快に顔面から転倒した。
「わっ!お前またかよ!」
「いい加減そのドジ癖治せよなぁー」
ミスタやアバッキオが言い、ナランチャは腹を抱えて爆笑し、フーゴやブチャラディはため息を吐いていた。
「い、いてて・・・ちょ、ちょっとドジっただけじゃねぇかよ。わ、笑うなよな」
強がってはいるもののやはり恥ずかしいのか、ナマエの耳がほんのり赤くなっているのをジョルノは見た。
瞬間・・・
キュゥゥンッ
新手のスタンド攻撃かと思う程の衝撃がジョルノの胸に巻き起こった。
はっきり言おう・・・
“ツボった”のだ。ナマエの様子に。
「じょ、ジョルノ・・・ぇっと、い、何時もこんなってわけじゃぁねぇからな?今日はちょっとドジっちまったけど、ぇっと」
新人の前で格好悪い姿を晒してしまったのが余計恥ずかしいらしく、赤くなりながら弁解するナマエの姿に、ジョルノは更にツボった。
「えぇ、何時もはそうじゃないんですね。わかってます」
「ジョルノっ」
嬉しそうな顔をするナマエの手を、ジョルノがギュッと握る。
へ?と声を上げるナマエに、ジョルノはにっこりと笑った。
「大丈夫です。僕が全力でナマエをフォローしますから」
「ぇ?え?ぇーっと・・・有難う?」
「はい」
キラキラしたジョルノの笑みに押されてそう頷いたナマエだったが・・・
「ナマエ、足元に空き缶があります」
「ナマエ、その食器は僕が持ってあげますから」
「ナマエ、シャツのボタンがずれてますよ。僕が直してあげます」
「ナマエ、靴紐結んであげますね」
「ナマエ、さ、エスコートしますから」
・・・・・・。
「ジョルノ・・・お前は俺を女か何かと勘違いしてるのか?」
「違いますよ?」
「じゃぁ何で・・・」
はっきり言って、ナマエがドジをすることは大分少なくなったが、同時にナマエは恥ずかしくてたまらなかった。
まさか日常のほとんどを後輩にフォローされることになろうとは!
今日こそはガツンと言ってやろうと思って先ほどの質問をしたのだが・・・
「ナマエがドジってしまう姿に何だか凄く保護欲が掻き立てられて・・・」
「ドジじゃねぇ!」
「けど僕、別にナマエを女扱いしたつもりはありませんよ?」
ぎゅぅっと、初日のようにジョルノはナマエの手を取ってキラキラした目をした。
「だってこんなに格好良いんですから」
「・・・か、格好良い?」
褒められて悪い気はしないもので、ナマエは素直に嬉しそうにする。
その表情にジョルノも嬉しそうに笑った。
「はい。ドジだけど、それでも仲間を第一に考えてたり、自分の怪我よりも周りの仲間の怪我を心配したり、強くて優しい貴方が好きです」
「そっ、そんなこと言うな。勘違いするだろ」
「勘違いじゃないです」
にっこり笑ったジョルノは「お願いします」という。
「ナマエが好きだから、少しでもフォローしたいんです。だからこれからも・・・貴方の傍で貴方をフォローしても良いですか?」
真っ直ぐとした目から己の目を逸らすことが出来ないナマエはついに・・・
「じ、自分で出来ることは自分でするからな」
そう返事をした。
おまけ⇒