「きょ、今日から、この職場で働くことになりました、ナマエと言います!ど、どうぞよろしくお願いします!!!!!!」
大分テンパって自己紹介をする僕に赤毛のロウドフ先輩が「おぅ。よろしくな」と気さくに言った。
その隣にいる緑の髪色のゼニロフ先輩が「まぁ・・・せいぜい減給されないように気をつけなさい」と淡々とした口調で言った。
げ、減給は困る!よ、よーしッ・・・頑張って仕事するぞ!!!!!
「行くぞ」
「ぁ、はいッ!!!!!」
突然声をかけられた僕は、ものすごく肩を震わせてから返事をした。ちなみに、今の効果音はビクゥゥウッ!!!!だ。
「ぁー・・・そんな硬くならなくて良いぞ。すぐに畏まってる暇なんてなくなるぐらい忙しくなるからな」
黄色い髪が眩しいカンシュコフ先輩の言葉に、僕は「はぃ!」と返事をした。
カンシュコフ先輩に案内されながら、僕は僕の仕事場へと向かう。
「さっきあの場にはいなったが、後一人ショケイスキーってヤツがいるからな」
「は、はい!お仕事中だったんですか?」
「ぁ?囚人の処刑だ」
「そ、そうですか・・・」
聞かなきゃ良かった。ちょっと落ち込む。
しばらく廊下を歩いていると、とある扉の前にたどり着く。
「新米。囚人番号04番には気をつけろよ」
「ぇ?先輩、どういう――」
「まぁ頑張れよ!!!!!!!」
ダッとものすごいスピードで逃げていった先輩の後姿を見ながら、僕は呆然としていた。
え?何で?何で逃げるの?
此処の囚人って、そんなに怖いの!?
け、けど仕事は仕事!しっかり全うしなければ!!!!!!!
ガシャンッ
目だけ出るようになっている小さな小窓を開き、僕は恐る恐る中を見る。
「わぁ!始めてみる人だ!僕はプーチンって言います!貴方は?」
え・・・ものすごくテンションの高い人が来たんですけど。
「ぇーっと・・・今日から此処で働くことになったナマエです」
「ナマエさんかぁ!!!!ナマエさんは、何担当なんですか?」
キラキラしている目。え、何これ凄い。全然囚人に見えない。
「一応、勉強類ですかね・・・囚人の皆さんが、社会復帰できるように、簡単ながらも勉強を教えるんです」
「勉強・・・!?」
あ。プーチン君は、ちょっと勉強が苦手そう・・・
「じゃぁ、簡単な問題から言ってもよろしいですか?簡単な足し算や掛け算らへんを」
「は、はい!よろしくお願いします!!!!!」
元気に返事をしたプーチン君は、扉の前に正座した。
ぇーっと、正座をする理由はわからないけど、僕は口を開く。
「19878633438+83987198298=?」
「・・・ぇ?」
「いや、だから・・・19878633438+83987198298=?」
「ぇ、ぇっ?」
「どうしたんですか?初歩的な問題なんですけど・・・」
何故吃驚しているのだろうか。
プーチン君はタラタラッと冷や汗を流して「ぇっと、ぇーっと」と言っている。
具合でも悪いのだろうか。こんな簡単な問題が答えられないのだから、きっととても具合が悪いんだ。そうれなければ、この程度の問題が解けないわけがない。
「ぁ、じゃぁもう一人の人・・・――!!!!!」
部屋を見渡して、赤い囚人服が見えた僕は、そう口にしかけて固まった。
囚人番号04番!!!!!!!!
カンシュコフ先輩が気をつけろと言っていた番号!!!!!!
「ぁ、あの・・・ぇーっと・・・04番、さん・・・?」
「あ。あっちで雑誌読んでいるのは、キレネンコって言うんですよ」
にこにこと彼の代わりに自己紹介をするプーチン君。
「き、キレネンコ・・・さん?ぇっと、んー・・・今の問題の答えは――」
「あ゛?」
ヒィィイイイイッと声を上げそうになった。
「こ、答え・・・わかります、よね?」
何とか声を振り絞れば、彼はしばらく僕をジーッと見て・・・
「103865831736」
と言った。
「せ、正解です」
よかったぁ・・・怒鳴られたり怖いことされなくて・・・!!!!!!
「おい」
「はぃッ!?」
安心していたところに突然声をかけられた僕。
な、何か不味いことをしたのか!?
「問題答えたら・・・どうなるんだ」
「ぇ?どうって・・・」
何!?ご褒美とか必要だった!?どうしよう、そんなの用意して無い!!!!!!!
「ご褒美・・・必要、ですか?」
あ。目がものすごく「当たり前だ」って言ってる!!!!!
どうしようこの人、囚人なのにあきらかにこっちより立場が上だ!態度的問題で!!!!!!!
「な、何が・・・欲しいですか?簡単なものなら、僕なんかでも叶えられますけど・・・」
ゼニロフ先輩と経費関連で相談しなくちゃいけなくなるだろうけど、この場合は仕方ない。
「肩こった」
「・・・マッサージですか」
よかった。高価なもの要求されなくて。
一応、用心しながら僕は中に入る。
雑誌読んでゆーっくりしている彼の肩に手を置いて、ゆっくりと揉み始めた。
「ン・・・」
「あ。靴好きなんですね」
後ろからだと、キレネンコさんが読んでいる雑誌の内容がよくわかる。
僕の言葉に少しだけ反応した彼は「あぁ・・・」と小さく返事をした。
「このブランド良いですよね。値は張るけど、結構丈夫でデザインも良いし」
「・・・わかるのか」
「一時期、そのメーカーでバイトしてたんですよ。まぁ、計算系の事務仕事ばっかりで、靴にはあまり触らなかったんですけど」
靴の話題になると興味を示すらしい。
「ぉっと・・・すみません。僕、そろそろお昼の時間なんですけど、もう良いですか?」
「あぁ・・・」
そっと肩から手を離す。文句を言われなかったのが不幸中の幸いだ。
「では」
ガン飛ばされると怖いけど、キレネンコさんもプーチン君も、そこまで怖くなくて助かった。
僕はそう思いながら出て行った。
おまけ⇒