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「・・・・・・」

自分で淹れた珈琲を飲みながらちらりとソファーを見た。



今日は佐隈さんも休みで、まだアイツ等も召喚していない。

それに名前も・・・




「・・・・・・」


携帯を手に取り、着信記録を眺める。



佐隈さんがバイトとして働く前から此処で働いている名前。

けれど未だアイツの番号やアドレスは俺のアドレス帳には記録されていない。


連絡はアイツからがほとんどで、俺からすることが少ないから、必要ないと思っているぐらいだ。






「・・・今日はまだ、一回も電話が来ていないな」


普段なら「今日は早めに行った方が良いですか?」や「ついでに買い出しに行ってきますから、必要なものを言ってください」とか、あまりにも日常的な電話がかかってくる。

けれど今日は名前も非番。何時もはかかってくる電話はまだ一度もなっていない。





「・・・・・・」


唐突にアイツの声が聴きたくなった。


いや、別に他意はない。他意は・・・





「・・・っ」


指がゆっくりと履歴に残ったその番号の下に表示される【発信】ボタンに触れようと――






〜♪


「!?」



突然携帯が鳴り響き、つい携帯を取り落しそうになった。

何とか心を落ち着かせて画面を見れば番号のみの表示。


けれどこの番号は知っている。

何故なら何時も見ているし、今だって・・・






ピッ


「・・・何だ」






《あぁ、やっと出てくれた。もしもしアクタベさん、今大丈夫ですか?》


電話の向こう側から明るい声が聞こえる。


俺は「あぁ、大丈夫だ」と返事をする。




内心は驚いていた。

まさか電話をかけようとした瞬間にかかってくるとは・・・





「で、何の用事だ」


《ぁ、いえ。用事はなかったんですけど・・・》




「・・・?」





《アクタベさんの声が聴きたいなぁって・・・ほ、ほら。何時もは毎日のように電話してるから、声聞かないと落ち着かなくて》

電話の向こう側から「ごめんなさい、いきなり」という声が聞こえた。



けれど今はそれどころじゃない。



「・・・――もだ」

《え?》







「・・・俺もだ、名前。声、聴きたかった」


電話の向こう側から息をのむ音。



俺が自分でも驚くほど素直にその言葉を言ったからだろう。





《ぁ、アクタベさん・・・》


「今日は非番だが・・・出勤する気はあるか?」





《仕事ですか?》

「・・・珈琲でも淹れて貰おう。自分が淹れたのより、名前のが飲みたい」




《・・・すぐ行きます》


最後に小さく「・・・待ってる」と言えば、電話の向こう側からガサガサッ!!!!やらガコンッ!!!という慌ただしい音が聴こえだした。

急いで準備を始めている名前の姿が目に浮かぶ。





《ま、待っててください!!!!》


その言葉を最後に《プーッ、プーッ》という音が響く。

俺はゆっくりと電話から耳を離し・・・








「・・・早く来い」


ソファーの向こう側にある事務所の扉をじっと見つめた。




おまけ



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