ピンクの可愛らしいフリルの洋服。
胸にはふわふわのクマのぬいぐるみが抱きかかえられている。
小さな小さな可愛い可愛い・・・
「よぉ、お嬢ちゃん」
夢の中の殺人鬼、フレディはその子に向かってニヤァッと笑った。
これからその子は、恐怖におののいた表情をするはずだ。
するはずだったのだが・・・
「僕、お嬢ちゃんじゃないよ?」
「・・・は?」
その子の予想外の言葉に、フレディは唖然とするしかなかった。
「僕、男の子だよ?」
「は?ぇ、けど、その格好・・・」
「お母さんの趣味なの。学校でも女の子みたいってからかわれるの」
しゅんっとした表情をするその子はまさに女の子。
フレディは自分の耳を疑うしかなかった。
落ち込んでいるその子の可愛らしいツインテールがふるっと揺れた。
コレの何処が男の子だというのか!
「・・・飴食べるか」
「食べる」
飴を差し出せばすぐにその子は嬉しそうにソレを受け取った。
「おじちゃん有難う」
へにゃっという笑顔。
それだけでフレディ的にはノックアウトだ。
「す、好きなだけ食べな」
何時の間にやらソコには甘いケーキや紅茶が並べられたテーブルと椅子が二つあった。
わぁ!と声を上げて椅子に腰かけたその子は「おじちゃん、魔法使いさんみたい!」と笑う。
その子が椅子に座るのを見てから、フレディも椅子に腰かける。
「あのね、あのね、おじちゃん。僕ね、こんなに沢山のケーキ、初めて見たの!」
「そうか、良かったな」
相手が男の子だろうが、見た目は女の子だ。そう開き直ることにしたフレディは、ニヤニヤと笑みを浮かべながら頷いた。
「ジェイソンおじちゃんにも見せてあげたいなぁー・・・」
「・・・は?」
フレディは再び自分の耳を疑った。
今目の前のその子は何と言ったろうか。
ジェイソン?
「おいおい、お嬢ちゃん・・・じゃなかった、坊や。今、ジェイソンって言わなかったか?」
「うん!ジェイソンおじちゃんはね、お母さんがお仕事で帰ってくるのが遅い時に、いっつも家に来てくれるの!今日も来てくれたんだよ?」
「・・・ぉー、そうかそうか」
フレディは自分の顔が引きつるのを感じた。
「ねぇ、おじちゃん。このケーキ、食べても良いの?」
「あぁ。沢山食え」
「わぁい!」
嬉しそうに笑ってケーキを食べるその様子に、フレディの顔がにやける。
が、ジェイソンという名前にはひっかかりしか覚えない。
「おじちゃん、おじちゃんは何ていう名前なの?僕はね、ナマエって言うの」
「ぁー、ぁー、俺はフレディだ」
「じゃぁ、フレディおじちゃんだ!」
その子、ナマエが動く度に、可愛いツインテールが揺れる。
フレディが自分の顔がゆるむのを抑えられないうちに、そろそろ・・・
「ん・・・?」
「あぁ、そろそろ目が覚めるんじゃねぇのか?」
「おじちゃん、おじちゃん!また会える?」
「あぁ、会えるさ」
ニヤァッと笑うフレディに、ナマエはふにゃっと笑い返した。
「今度は、ジェイソンおじちゃんも連れてくるね!」
「・・・ぉ、おぅ」
ジェイソンの名を聞いた瞬間、フレディは微妙な顔つきになりながらもうなずいた。