ギアミュを見ました

2023/10/03 05:11



ご存知の方もそうでない方も、
私はコードギアスを無印R2共にリアタイした人間で、ジェレミア・ゴットバルトが大好きです。
ジェレミアへのかんじょうは「好き」という言葉にとどめておりますが、その実はもう少し複雑で、オブラートに包んで言えば「尊敬と羨望」といったところです。
まぁ「好き」に変わりはないので今はこのくらいで。

で、そんな私がギアスミュージカルにジェレミアが出ると知ったんですから、それは一も二もなく見に行きますよ。見に行きました。
結果大正解でした。Vステザギさんに引き続き、推しが現実世界に受肉するという最高体験を存分に味わわせていただきました。感謝。
一回じゃ満足できなかったので追いチケットも購入して、京都と東京、どちらの公演もジェレミアイメージの着物で会場入りして、最高に覚悟決まった「ジェレミア・ゴットバルトのファン」として最高の舞台体験してきました。
残念なことに、追いチケットした東京公演は演者さんの体調不良で「当日公演中止」というショッキングな結末になってしまいましたが、それでも京都で購入できなかったジェレミアの個人ブロマイドだけはゲットしました。十分です。


そして10月1日、キャスト全員揃っての大千秋楽が終わり、ギアスミュージカルは幕を閉じました。
その千秋楽のライブチケットを購入して、果たせなかった「二回目」の観劇をアーカイブでいつでも見れる状態なんですが、まだ見れてません。

見たいんですけど、葛藤があります。長くなるんですけど、その葛藤を少し吐き出させてください。

こうやって自分が積み重ねてきた「努力と準備」を人目に晒すの、普通に女々しいし、恥晒しだし、みっともなくて見苦しいから、黙ってた方が格好はつくんだけど、でも、自分の状況と感情を整理する上では効率的だから、やる。やります。



──



白状しような。
いい加減整理つけて、その感情の正体を白日の下に晒したほうがいいよ。

これは「心残り」だよ。

9月18日、京都公演千秋楽。
私は可能な限りの正装を揃えて劇場に向かった。
揃わなかったのは黄色のベルトと赤い羽根のブローチ。
純血派のバッジを用意できなかったのは大きな欠けだけど、でも充分満足できる仕上がりだった。
だから堂々と、胸を張って、「ジェレミア・ゴットバルトのファン」として、観劇できた。
個人ブロマイドの完売は普通にショックだった。けどランダムブロマイドを自引きできたからこれはトントン。
ぶっちゃけ席は最悪だった。遠いし狭い、二階席。演者さんの顔なんてほぼ見えない。息継ぎも、細かい表情も、指先まで張り巡らせた神経も、何一つ見えない。でもジェレミアだけは意地で追いかけた。他は二の次。だってジェレミアのために来たんだもん。そのための正装だもん。後悔も後ろめたさもない。

ステージが終わる前から、私はもう「次」を考えてた。

次、次。観劇可能な、次の東京公演、次こそは全部揃った条件で観劇する。
職場に急遽休み申請を出した。月前半休日返上出勤があったから公休が一日余ってた。それで平日に2連休を作った。日程はクリア。
移動は新幹線、帰りは夜行バス。長距離移動は苦ではない。クリア。
足りなかったモチーフを揃える。帯はマントをイメージしたカラーだったから、帯締めはマントを固定する飾り紐の色、黄色のベルトを探して買った。純血派の赤い羽根のバッジ、まったく同じデザインのものは手に入らないから、限りなくそれに近いデザインのブローチを探した。滑り込みで前日に届いた。完璧な条件でクリア。
席は問答無用でS席。それ以外ない。保険でオペラグラスも買った。オレンジ色があれば良かったんだけど、純血派の赤で我慢。次こそは、ジェレミアの汗まで見届けてやる。クリア。

準備は苦ではない。これは「完璧」を迎えるために必要な行程だから、つまり「おもてなし」と一緒。積めば積むだけ、整えれば整えるだけ、私の「誠意」の体現になる。私が目指すところだ。
こうして「完璧」な状態で「ジェレミア・ゴットバルトのファン」を体現できること、それだけで無上の幸福を感じる。あとはこの誠意をもって、ジェレミアを見届けるだけ。そのために場を整え、物を揃え、心を尽くしてきた。東京に向かう私は自信と矜持に満たされて、晴れやかだった。

京都の時と同じく、カラオケルームを借りて着物に着替えた。さすがに新幹線を着物で過ごすのはいろいろ、不都合が多いから。鏡のない部屋なのは不便だったけど、着付けは体が覚えてるから問題なかった。白のブラウスにスカーフ留めに見立てた赤いボタン、軍服の飾り模様と同じ黄色の半襟に紺地の着物、マントをイメージした白と黒の帯に帯締め代わりの黄色のベルト、着物に隠れてほとんど見えないけど黒のブーツ、白のレース手袋をつけて、首元に純血派と同じ赤い羽根のブローチ。完璧。すべて揃った。
サンシャイン劇場にはずいぶん早めに着いたように思う。また個人ブロマイドを買い逃したら今度こそ後悔なんて言葉じゃ心の整理が着かなそうだから。劇場前にはまだ2、3人しか人は居なかったけど、そこからゆっくりと、確実に入場待機の人影は増えていった。
みんな、この公演を楽しみにしてるのだと思うと、私も嬉しかった。でもそれ以上に、私以上に「完璧に」整えてこの公演を見る人はいないだろうなと、自身に満ちた誇らしい気持ちで開演を待っていた。

「おかしい」と感じたのは、予定しているはずの開演時間を過ぎてから。入場列がいつまでも形成されないのも違和感だったが、スタッフの動きもあまり大きくなく、なんのアナウンスも流れない。
私はしばらく暇をもて余してたので、SNSばかり覗いていた。だから公演中止を知ったのも、公式アカウントのツイートを見たのが先だった。

投稿は数十秒前。添付画像には「公演中止」の文字。声も出なかった。

その後すぐに、会場スタッフが張り紙と声掛けとで今日の公演の「当日公演中止」を待機していた観客達に伝えた。どよめきが起こり、涙している人もいた。物販とリピーターチケットの販売、VR体験は行うとのことで、入場列が形成される。チケットはノーチェック。無事個人ブロマイドとランダムブロマイドを購入したので、その達成感ですべてを誤魔化して、あっという間にサンシャイン劇場を後にした。涙は出なかった。
時間ばかり無駄に残ったので、急遽ネットカフェに逃げ込んで、たった1時間前に着たばかりの着物を脱ぐ。帰りは夜行バスなので、当初の予定通り過ごしやすい格好に戻って、着物小物も片付けて。まだ涙は出ない。まだ誤魔化しが効いてる。私は大丈夫。

赤い羽根のブローチを着物から外す手が、少し震えていただけだったから、大丈夫。大丈夫。

バスまでは時間があったので、しばらくネットカフェにお世話になる。空腹は感じていたけど、それどころではなかったから、全部を誤魔化して、SNSを見たり、ソーシャルゲームを走ったり、気を紛らわせた。
公演中止の理由、体調不良者、それがジェレミア役の神永さんとわかっていたから、だから「仕方がない」って。例え神永さん抜きにして開演しても、それじゃあ私がこのミュージカルを見に来た意味にはならないから。だから「仕方がない」って。ジェレミアのいない作品を見ても「仕方がない」って。だから中止も「仕方がない」って。
ジェレミアの不在は自分を納得させる理由には十分だったし、ブロマイドも購入できたから満足する理由も十分あった。だから誤魔化しは効いた。私は大丈夫だった。きっと私以上に、この日の舞台を楽しみにしている人が、あの場には居たはずだから。だって私は公演中止を聞いても涙は出なかったから。あの場には涙を流している人も居たから、それに比べれば、私は全然大丈夫。大丈夫だった。
そうやって、私のギアミュ東京遠征は終わった。

そして10月1日、大千秋楽。
ライブ配信チケットは購入してた。でもその日も仕事だったから、リアタイはできない。
仕方がない。私は私の仕事にも誇りを持っている。白状すると、私が今の仕事を選んだのにはジェレミアの影響がある。元来人に仕えるのが好きな性質ではあるけれど、それを強く自覚したのはジェレミアに出会って、その忠義を見届けたから。私はその日限りのたくさんの人に、ジェレミアは人生でただ唯一の人に、尽くし仕える対象は大きく違うけど、同じく人に心身で尽くす仕事だから、だから私はこの仕事に誇りを持っている。
しかもこの日は、わざわざ私を指名して来たお客様が居る。他の誰かではなく、私を選んでくださった。そんな人に尽くせるなら、それなら、最後のジェレミアを見届けれなくても、恥ではない。自分を納得させるには十分すぎる理由だった。
そしてその日の仕事が終わり、キャスト全員が揃ったギアスミュージカルも幕を閉じた。

後悔はない、後ろめたさもない。でも私は、未だに千秋楽のアーカイブを見れないでいる。
きっとそれは、9月27日、全部揃った完璧な状態で、ジェレミアを見届けられなかった、私の誠意が報われなかったという、「心残り」に相違ない。
いま千秋楽を見たら、本当に「終わった」ことを受け入れてしまったら、この「心残り」は一生成仏しないとわかっているから、見れない。見たくない。
本当は、無理を押せば、千秋楽だって、劇場に見に行けた。チケットをとって、弾丸ツアー組んで、また着物を着て、「私を選んでくれたお客様」を蹴って。見に行けた。できないことはなかった。やればできた。
それをすれば、「ジェレミア・ゴットバルトのファン」である私は報われた。今こうして、惨めに「心残り」に苛まれる必要もなかった。
でもしなかった。自分を納得させる理由はたくさんあったから。ブロマイドは手に入った。配信チケットも購入してる。いつでも見れる。ジェレミアと同じく人に尽くす仕事で、「私を選んでくれたお客様」がいる。だから大丈夫。

全然大丈夫じゃなかった。こんなにも悔しい。
でももう仕方がない。全部終わってしまった。

こうして心残りに囚われているのは、私がまだまだ未熟で、世間知らずで、弱いからだろうと思う。理解してる。
未熟で世間知らずで弱いから、だからこそ、私はこの心残りに折り合いをつける方法がわからない。
アーカイブを見たいという気持ちはある。でも、劇場で見れたかもしれない千秋楽を、見るという選択をしなかった私が、今さらジェレミアを見届けるには、どれだけの「誠意」を体現すればいいのか、今の私にはわからない。
わからない。だから見れないです。








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