永久の夜に君は笑う03

「ジジイの手なんか借りたら海賊の恥だよい!」


そう言ってマルコはオーディンの手をとらず自らの力でヨロケながら立ち上がった。

「おーおー、血も繋がらんのにソックリじゃ。ニューゲートもお前も。」


「あ゛?当たり前だろい。俺はあの人の息子だからよい。」


口の効き方が気に入らないのか、
終始牙を剥いたまま控えていた狼達が
ソッと老人にすり寄って座る。



「さぁ、丁度酒も無くなった。お別れの時としようか。」



「よい。…で?どうやって帰りゃいいんだい?場所がわからねぇ。」



「あぁ、ちゃんと遣いを出す。」


チラッと2頭の狼を見てマルコは苦笑した

「そいつ等は勘弁してくれよい。さっきから牙しか見せねぇからな。」



一つ頷いて、オーディンは空を見上げた。


「…?、おい、ジジイ…」



ヒンッ
どこからか声がして、乾いた音が続く。
マルコは頭上を見上げて、吹き出した。
あぁ、本当に神ってやつかもしれねぇと。


空を駆けてきた真っ黒い馬は、何故か足を八本持ち、風の様に滑らかにマルコの眼前へ舞い降りた。



「スレイプニール。私の愛馬を貸そう。」


「いや、別に飛べるし要らねえよい」



「ジジイの言うことは聞くものぞ?お前では100年経っても帰れんわ。」



杖に成り代わっていたその先端で軽く頭を小突かれて、渋々スレイプニールに跨がる。
風より速く駆け出したせいで、ジジイに礼を言い忘れたなと思いながら笑った。



―――対価を忘れるなマルコ。
―――志を我に示して生きよ。



「あぁ、よい。良く見てやがれ!」



天を駆け、海を割って走る軍馬の上で、
マルコは親父にどう報告してやろうかと
目を閉じた。






―――――――――



「ッッ?!…れ?…モビー?だ、ねい。」


――クスクス
――クスクスクス



「せん、かよい。」


「お帰り、マルコ。楽しかった?」


「あ?楽しい訳あるかい!まだ痛てぇ。」





思えば、せんの笑い声に聞き覚えがあった。
決まって夜だけ、こんな声が聞こえた事があった。…風だと思って気にもしなかったが、確かに。



「お前、ずっと見てたろい。」


「…まぁね?」


「また、来んのかい?」


「さぁ?…海は広いからねぇ。」



楽しそうにクルクル回りながら、
居るのか居ないのか解らないけれど、
確かに今、マルコの前でせんは
にこやかに笑う。


「ジジイに。馬の礼言っといてくれよい。あと、瞬き惜しんで見てろってなぁ。」


「うん。」


「また、会うか知らねぇが。とりあえず、忘れはしねぇよい、せん。」


「へへっ。マルコって変な奴!」


「…あのジジイにゃ負けるよい。」



ふふふっ!



愉しげな笑い声だけを残して
もう、せんは居なかった。
きっとまた、ジジイにこき使われて
戦士とやらを見つけに行くのだろう。



「さぁて、夜が明けちまうよい。」



白み始めた空の向こうを眺めながら
今夜あたり、親父と酒がすすむだろうなと
マルコは小さく笑って、自室に足を向けた











例えば神に啖呵を切るとしても
胸の印を、誇りに思う。
それが、俺の生き方だよい。





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