Country side..a boy...

そこはスプレ島という、
島内の農業だけで数百人が暮らす
途方もなくのどかな島だった

そこで生まれ、そこで育ったサッチは
何が貧しく、何が豊かであるかも
知ることはなく、歳は14になった。

ひとつ物足りないといえば
生まれた時から父親が居ないこと


そして、夢は
母親の農場を継ぎ
島の海辺の家に住むメアリーと
結婚して、かわいい子供に囲まれ
過ごすことだった。


3年前、サッチは初めてメアリーを見た

日差しの強い夏の昼下がり
穏やかな波の音が心地よいビーチだ


あまり泳ぎの得意でないサッチに
メアリーはくすくすと笑って見せ
ピンクの花柄の水着に、揃いの水泳帽を
被ると勢い良く海に入り、あっという間に
数十メートル先の波間に顔をのぞかせた

サッチにとって、
メアリーは魔法使いのようで
彼はその様子を、じっと見つめていた

「ルイーザ、見たかい」
「ふふっ、あんたを見てる方がよっぽど
楽しいよサッチ」

母が作った弁当を目当てに、サッチを海に連れてきた農場手伝いのルイーザは、
そう言うと手を叩き大声で笑った。

その日、家に帰り母に同じ話をすれば
母もまた同じように手を叩いて笑うのだ。

サッチの初恋は、本人が自覚し頬を染めるより早く、島の女の口伝いに広まった。


3年が過ぎた今でも、サッチはメアリーと会う度に顔を赤らめ、メアリーは悪い気はしない、といった気取った顔をする。


「やあ、メアリー」
「あら、サッチ」

メアリーは少し女性らしくなった
サッチもこの3年で背が伸びた
水着姿のメアリーに、サッチは少し目のやり場を失った

「今週末は、祭りだよ。今年も踊るのかい?」
「今年は...どうかしら、明日のリハーサルには行くけど」
「そうか...」
「どうしたの、わざわざそんなことを聞きに?」

少し、見下したようなメアリーのあどけない
顔に、サッチは少し口が緩んだ。

「楽しみだからね、メアリーが踊るの...見るのは」
「泳ぐのを見るのが、じゃなく?」

図星を突かれたサッチは、咄嗟にメアリーの
顔を凝視してしまった。
心音が自分の耳にダイレクトに聞こえてくる
のが更に焦りを加速させる。

こんなやりとりは初めてじゃないが
何か上手いジョークはないか
何か洒落た言い回しはないか
何かに焦る思春期の少年は

思わず、メアリーを抱き寄せて
頬にキスをした

君が、好きなんだ

勢いのままそう言いたかったが叶わず、
情けない小さな叫び声と共にサッチは思わず走りだしてしまった。

対するメアリーも、自分より意気地ないサッチの突然の行動に、呆然とその感触の尾を追うように頬を撫でつづけ、浜辺に立ち尽くしていた。




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