多忙な鷹の目

「ドフィ」


「ん、なんだ」


「これ、例の配下のリストだ。
不純物を混ぜ込んだ量はマチマチなんだが、
嵩増しして国外に流してたのは確かだ」


「何人だ」


「幹部格が60人、全部で……」


「殺せ」


「・・・は?」


「全員殺せ、人数を聞いてすまなかった。
そんなものには興味がない、全員殺せ」



機嫌がいいものかと思ったのも一瞬、やはりそれは
紛い無くこの国を掌握せんばかりの力を持つ
ジョーカーだった。


青白く光る彼の横顔は、それはそれは凛々しく、
血も涙もない、男の色気すら感じさせる。


青白いのは、目の前の水槽が青白く光っているから
なのだが、それにしてもなかなか洒落たライトだ。


「聞こえなかったか、鷹の目。明日までに全員処刑だ
そうだな、世話になったエルパソの酒場で首を晒してやれ」


「え、いや……あの、1000人以上だぞ」


「お前なら、できる」


「……努力しよう」




向きなおした水槽に向かって、なにやらモゴモゴと
小さく口を動かす、不可解なドフラミンゴの行動に
このときは何も気に留めなかった。




「ジュラキュール様、お電話が入っております」



電話をわざわざもってきた使用人から受話器を受け取るも、
目の前のドフラミンゴは水槽を見つめたまま動かないもの
だから、出るに出れない状況だ。


「ドフィ?」

「ア?」

「電話、出ていい?」

「あァ、気にすんな」



耳をつんざく妻の声を必死に受け止めた。
最近は細やかなことも電話で伝えてきてくれる。

多少は俺に愛情を抱いてくれてるのだと、そう思えた。
17年前に結婚をしてからというもの、モっちゃんは
何時までも香しく、鋭い棘をもってオレを魅了する。

幸せ以外ならなんだろう

やっぱり幸せだ。


「スイス銀行の口座5つ解約するのが、細やかな話か。
いかれてるぜ」

「なにっ?」

「丸聞こえだ、お前の嫁の声。」


フッフッフ……と、オレの予想に反してその様を笑い
ドフラミンゴは、そのままユサユサと体を揺らして
何処かへと歩いていった。



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