波の音とか
ふとした瞬間に脳裏を電撃のように走る
そのヴィジョンは決して、好きなピンク色でもなければ
黒でも、白でもない
深い深い青
引き上げてやろうと伸ばされた細い腕は無残にも引き込まれ
フィオナは大きなしぶきを上げてプールへと落ちていった
瞬く間に体を駆け抜けた寒気を拭い去るように
握られたその手が熱く感じた。
大きな手が、大きな腕が、彼女を包み込む。
手から伝わる熱で、体に火がついたように、焦げる。
「ハァ」
とたんに吐息を漏らしたのは、決して彼女だけではなく
彼もまた、青白い顔で彼女を覗き込み、息を漏らした。
そびえる塀の切れ目、その隙間
空が青かった。
「痛かった」
「あァ?泳げねークセして、飛び込むんじゃねーよ」
「ドフィは泳げるの?」
「...ッフッフッフ」
大事なことは、そんな話ではないくせに
彼の不敵な笑みをまじまじと見つめ、彼女はまた、言葉を失った。
本当に言いたかったことは
次の日曜日、ずっと私と一緒にいてくれますか
一日中私を
愛してくれますか
ねえドフィ
ねえドフィ...
←Back Next→
Book Shelf
Top
[ 13/45 ]