男の家は男の城

つい先日まで、百人は下らない従者達が仕えていたであろう
クロコダイルの男の城は、風貌そのままで佇んでいる。

整えられたエントランスの庭に、卑しいほどに色鮮やかに咲く
マリーゴールドは、さも英雄ながら質素な暮らしをしています
と主張せんばかりにそこに根付いている様子だった。

彼らに植物に関する知識はなくとも、背景をあの豪勢なマンション
とするなれば、その色鮮やかなマリーゴールドは不釣合いであった。

エントランスに着けられたリモから出産のごとく降りたった
ジョーカーは、フィオナを抱え上げ、そのまま回廊を進み
奥に蠢く光へと歩みを進めた。

全ては異世界のおとぎ話のようで、全てが光り輝いていて
フィオナの目には少なくとも、小さな出来事の一つ一つが
その程度ステキに思えた。

ジョーカーにとっては長旅の疲れを癒すために
裏庭のプールサイド、ゆとりのあるデッキチェアに寝転び
足を伸ばして昼寝する為だけ行動。

自分の意を介さずにそのまま運ばれていくフィオナにとっては
それがたまらなく面白いのだろう。

はたまた上下逆さに展開される彼女の視界は光り輝き、
その逆さに展開される彼の視界は、美しい楕円のプールを捉えた。

心地よい日差しを受け、ピンクに包まれた人魚は
緑に溶け込み

大男はそのまま昼寝を始めた。


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