人魚の初恋

鼻先をくすぐる

風に揺れる、ピンクが

鼻先をくすぐる


薄ら目を開ければ、直射日光が強烈にお出迎え

直視することが出来ずとも、彼女の眼前にそのピンクは広がった

まぶたの下からでも感じるのはピンクとブルーのコントラスト

それが海じゃなくて、空の色だと彼女は知っていた。

流れるブルーに揺れるピンク。

しばらく目を閉じ、外界の明るさになれた頃、まぶたを少しずつ開く。



記憶の隅にある世界が逆さまに流れ行く、
煩ったいピンクを少し手で押さえると、美しいあおぞらが広がった


「起きたか」

男の声はピンク同様、耳をくすぐるような声で
彼女は身をすくめた。


彼の鼻腔を真正面に捉えたとき、逆さまの世界の正体は
いとも簡単に暴かれ、直近で思い起こされる記憶を噛み殺した。


「...あ...あぅ....うぁ」


「喋れねェのか」


「あ...い...え....う....」


口の動かし方、この口を使って何かを人に伝えるのは
彼女にとっては慣れないことであった。

そもそも、誰かに何かを伝えるのに、この口を使ったことが
あっただろうか。



「アア....ィ.....。」



膝に乗せた彼女の頭蓋骨を確かめるかのように
ドフラミンゴは優しく触れ、そして彼女の口の動きを凝視し

それが数週間前に起こった小さな出来事の
鏡で反転させたようなコトであることに気付き、口端を上げた。



「あいしてる」


「ア...ィ...シて...」


「あいしてる」


「……。」


彼女は笑った。



←Back   Next→

Book Shelf


Top







[ 10/45 ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -