The Miami 02

水平線の向こうから上り来る日の光は
燃えるようで、車内に突き刺さり
朝の到来を知らせる。

後にも先にもこんな光景を見る事があるだろうか

疲れた身体をドアに寄せ、ハンドルを握る手には
幾分か余裕がある。

右隣に眠る女の寝顔を覗けば、何とも色気のない
険しい顔が垣間見え、

眠れるだけマシか

そう思えば、緊張しきっていた自分の心も
少しは楽になった。


だから、景色を見ることも出来る。


朝の空気の冷たさを感じることもできる。


太陽が温かいと感じることもできる。



ウェストパームビーチ
ハーバー沿いの道を走っていた。

広がる空と海に、故郷のような大地はない。

同じ国なのにこうまでも違うかと、ゾロは小さく
笑いながら己らをマイアミへと向かい入れる
サインとすれ違った。


「起きろ。」


ゾロの声ではっと目を覚ましたフィオナの視線の
先には、広過ぎる程の海が広がり、その光景に
思わず声を上げた。


「…海。」

「マイアミに入った、
 適当なところで電話をかけにゃならん。」

「…うん。」


話半分の様子で、フィオナもまた水平線から昇る
太陽を眺めながら息をのんだ。


「降りるか?」

海の見えるガススタンドに車を入れたゾロは、
グっと上半身を乗り出しフィオナの顔を
覗き込んだ。

「電話…でしょ、してきていいよ。」

「内容は、聞かなくていいのか。」

「大丈夫、信頼してる。」

力強い返答に、まるで自分の方が弱いと
言われている気さえした。
自分に対しての呆れからか、ゾロは深いため息をつき、
フィオナの手に没収していたベレッタを押しつけ、
車を後にした。

受話器を取り、車に振り返れば、真っすぐに前を
見据えたままのフィオナの姿が映る。
言葉のどこにも嘘がない、その覚悟も信頼も
嘘ではないと確信ができるほどに。

ロサンゼルス以来日の目を見ていなかったメモを
眺め、不意にダイヤルをする指が止まった。



途中で中継にも繋がらぬ電話は小銭を払い戻す虚しい
音を立た。ゾロはゆっくりとそれを拾い上げると
投下口に半分、小銭を突っ込み、躊躇しながら小銭を
落とし、また電話からジージーと鳴る古めかしい
機械音に聞き入った。


気を取り直しそそくさとダイヤルを回す。





「(誰だこんな朝早くにィ。)」

電話の相手は大層機嫌の悪そうな大きな声で話す。
それに頬を緩ませたゾロは続けた。

「俺だ、ゾロだ。」

「(ん?あのハナッタレがいっちょまえに電話なんか出来る様になったのか。グララ…。)」















[ 36/43 ]

[*prev] [next#]
[もくじ]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -