The Phoenix



ちらほらと見えていたガススタンドやストアが
見える頻度が減り、殺風景な道が続いた。

メキシコとの国境にもほど近いこの一帯は、強い日差しに
緑も絶え絶えといった様子だった。

ガススタンドに寄ったゾロは、警戒するように辺りを見回し
背伸びをしながらあわわとあくびをした。
つづいて車から降りたフィオナはそそくさと車を離れた。

「おい、どこいく。」
「トイレだよ、バカ!」

サンディエゴを出た後、ハンコックの仕事の内容も確認せずに
二つ返事で引き受けたことや、あげくの果てには薬物中毒、家出、頭の悪さ
などを散々咎められていたフィオナの苛立ちは爆発寸前であった。

ふてくされツラをぶら下げ、精算所に入って行くフィオナの姿を
監視するように睨みつけたまま、ゾロはガソリンをまき散らすように給油口から抜いた。

恐らくいやがらせであろう、フィオナは随分と時間をあけてから、
大きな紙袋で上半身をすっぽりと隠すように、荷物を抱きしめて
ヨロヨロと車に戻って来た。

「あー、かゆーい。」
「あァ?お前、金持ってたのか。」
「あるよ、金持ちだもん。」
「つーか、かゆいって・・・。まだ禁断症状出てんのか?」
「そんなんじゃねーよ、バカ!」

二言目にはバカ。
その往訪に、ゾロもため息をつき車のステレオのボリュームを上げた。
フィオナは見慣れないサングラスをかけて、両手いっぱいに地図を広げた。
速度を上げた、アメリカ南部のサボテン地帯を走り行く車は
アリゾナと書かれた看板に砂埃を吹きかけた。

「かゆい・・・。」

相変わらず、フィオナは地図から離した片手で脚をぼりぼりと掻きむしっているが、身にも余る
新しい車の新設備はその大きなドラムの音で不快な音をかき消した。
わらわらと広がった地図がフロントガラスを覆い、ゾロはぐっとこらえていた
怒声を思わず上げた。

「邪魔だからソレたためバカ!見えねーだろーが!」
「うっさい!バカって言うな!そして音楽変えろ!」
「っざけんな運転してんのはオレだろーが、じっとしてろ!何もするな!何も言うな!」
「ナニコレ?ハードロック?超ダサイんだけど、よく耐えられるね、ダッサ過ぎ。」
「テメーKISSバカにすんなマジ!大御所だろーが!アメリカの代表だろーがバカ!」
「しかも道間違えてるし!なに曲がってんのよ!真っすぐだって!」
「寄るとこあんだよ、ガタガタうるせー!」


ゾロは更にステレオのボリュームを上げると、アクセルを踏み込んで
砂埃を上げながらしばらく交差することもない道を進んだ。

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